在日朝鮮人民同胞に訴える!
「日本人拉致問題」を利用した反朝鮮の排外主義の嵐に抗して闘おう
日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派
朝鮮語訳


 (1)
 すべての朝鮮人民よ! とりわけ、この日本の地において、あらゆる民族差別と迫害に抗しながら日本労働者人民の兄弟としてたたかってきた在日朝鮮人民同胞よ!
 われわれ日本の革命的左翼は、いま日本の地で嵐のように吹き荒れている「北朝鮮による日本人拉致問題」をめぐるキャンペーンに、腹の底からの憤りを禁じえない。この悪意に満ちたキャンペーンにさらされながらも、挫(くじ)けることなく不屈にたたかっているすべての在日朝鮮人民同胞との心からの連帯をわれわれは表明する。

 (2)
 われわれは、キム・ジョンイル(金正日)が自白した「日本人拉致」という過去の行為について、スターリニスト官僚専制国家が犯した日本人民にたいする国家的犯罪行為として弾劾する。けれども同時に、この「拉致」の自白を利用して、有事法の制定を正当化するとともに、かつての日本国家の朝鮮人民にたいする数多の犯罪を帳消しにしようとして騒いでいる日本政府権力者とその手先どもの悪辣なやり口を、われわれはその数倍も弾劾する。
 彼らはいま、「北朝鮮はテロ国家だ」と鬼の首でもとったかのようにがなりたて、北朝鮮人民にたいする、そしてまた在日朝鮮人民にたいする民族排外主義を煽りたてている。それは、アメリカ・ブッシュ政権が世界中でくりひろげている「テロリスト根絶」を名分とした侵略戦争に、日本国家として参戦するという彼らの野望を日本人民に受け入れさせるためなのだ。「テロ国家がすぐ隣に存在し、このテロ国家を支持する特定民族集団が国内に存在する以上、武力攻撃や内乱にたいする備えが必要だ」――このように強弁して「有事法制定は当然だ」という世論をつくりだすためなのだ。「戦争のできる普通の国」として復活するという日本帝国主義権力者としての悲願を実現するために、そのためにこそ「日本人拉致問題」を被害者面して騒ぎたてているのが、彼ら日本政府権力者どもなのだ。われわれは、このような日本政府権力者の悪巧みを断じて許してはならない。
 それだけではない。彼らは、「南京大虐殺などはなかった。戦争で民間人に多少の犠牲者がでるのは当然だ」「従軍慰安婦などはいない。彼女たちは自由意志で体を売ったのだ」「朝鮮人強制連行などはない。彼らは日本国民として当然の移住をしたまでだ」などと、いまだにほざいている卑劣きわまりない連中だ。韓国パク・チョンヒ(朴正煕)政権と日本政府との間で交わされた戦後補償についてのとりひきを盾にして、「戦後補償問題はもう解決済みだ」などと強弁し、従軍慰安婦にされた朝鮮女性からの告発を蹴飛ばしている恥知らずな連中だ。かつての日本国家の汚辱にまみれた犯罪行為を傲然と正当化し、そのために「日本人拉致問題」を利用しているこのような連中こそが、労働者人民の鉄槌をうけるべきなのである。
 在日朝鮮人同胞よ。このような卑劣な連中の、悪巧みに満ちた在日朝鮮人民への非難と攻撃に、諸君は断じて膝を屈するべきではないのだ!

 (3)
 在日朝鮮人同胞よ。諸君が、「拉致などでっち上げだ」という北朝鮮政府のこれまでの見解を信じ、それに追随してきたことへの慚愧(ざんき)と悔恨(かいこん)の念にいま身を震わせていることをわれわれは知っている。みずからが信じて疑わなかったキム・ジョンイル政府に裏切られたことへの諸君の失意と痛憤はいかばかりであろう。
 だが在日朝鮮人同胞よ。だからといって諸君は、日本帝国主義の過去の植民地支配と戦争犯罪にたいする正当な弾劾と責任追及の闘いまでをも、ここで放棄すべきではない。
 いったい何十万の朝鮮労働者人民が有無を言わさず強制連行され、賃金も払われずに奴隷労働を強制されて、あげくのはてに異国の地で非業の死を遂げたのか。これこそが、「大日本帝国」による大量拉致犯罪と言うべきではないか。いったい何万人の朝鮮人婦女が祖国から強制的に連れ去られ、日本軍兵士専用の「慰安所」で性奴隷にされて辱めを受けたのか。これらの歴史的事実を、諸君は、――そしてそれに加担させられた日本人労働者人民も――絶対に忘れてはならない。諸君は、その責任を当時の「大日本帝国」政府の正統な継承者に、あくまでも問い続けるべきである。このことは、「拉致」問題をめぐって北朝鮮政府が日本人民から受けるべき責めとは何の関係もないし、それによって相殺されるような性格のものでは断じてありえない。
 いやそれだけではない。日本政府は、昨年十二月に、いまではキム・ジョンイルが北朝鮮特務機関の「工作船」と認めた武装船を公海上で捕捉し撃沈した。この戦闘では、十数人の北朝鮮機関員が船とともに海の藻屑(もくず)と消えた。この行為は、戦後日本国家がはじめておこなった公海上での戦闘行為であり殺戮行為である。これは、憲法第九条で禁じられているはずの交戦行為そのものにほかならない。この日本国家の公然たる殺戮行為を当時において弾劾したのは、日本ではわが革命的左翼ただひとりであった。すべての自称革新政党もマスコミも、この戦闘行為で海上保安庁側にケガ人がでたことには大騒ぎしたが、「不審船」乗組員の殺害にはなにほどの問題もないという態度をとった。現におこなわれ、そして今後もおこなわれるに違いない日本国家の白昼公然たる国家的テロ行為を、そしてそのことを当然の「防衛的対応」ででもあるかのように言いつのる日本のマスコミや革新政党の度し難い腐敗を、諸君は、――わが日本革命的左翼とともに――声を大にして弾劾すべきなのだ。

 (4)
 もちろんわれわれは、帝国主義の悪辣な攻撃のまえではキム・ジョンイル政権を擁護すべきだ、などと――堕落したトロツキストのように――言っているわけではない。
 キム・ジョンイル軍事ボナパルチスト権力者は、飢餓と洪水に苦悶する労働者人民から浮きあがり、人民のうえに君臨している特権的軍事官僚にほかならない。「人民民主主義共和国」と称される国家は朝鮮労働党に従属し、朝鮮労働党は「チュチェ思想」を根幹としてこの政府を創り出してきたキム・イルソン―ジョンイル親子に従属する、――こうした絵に描いたようなスターリニスト官僚専制国家が、北朝鮮国家なのだ。このことは、彼らピョンヤン官僚が、労働者人民のたゆまざる組織化と人間変革をつうじてプロレタリア国家を建設する、というマルクス・レーニン主義の大道を、朝鮮型社会主義建設と「チュチェ思想」の旗のもとに放棄してきたことの証左なのだ。だが、キム・イルソン(金日成)の「チュチェ思想」さえもが、――経済的破滅と大洪水と干ばつの繰り返しを決定的な条件として――いまや風化させられているではないか。
 労働者階級の階級的全体性への献身と、それを「体現する」と自称する特定の指導者への「忠誠」という名の個人崇拝とは似て非なるものである。われわれ日本の革命的左翼は、朝鮮の労働者人民がつねにかならず「偉大な将軍様のおかげで」という「挨拶」をかわすことに限りない違和感と不快感を感じてきた。「偉大な将軍様」などと人民大衆に呼ばせて悦に入っている指導者などは、個人崇拝によって専制体制を維持してきたスターリンの末裔だというべきではないか。このように労働者人民から浮きあがっているからこそ、彼は、自国経済の破滅から脱出するために、しかも中国およびロシアの官僚指導部の強い要求のもとに政策的急旋回をやってのけた。すなわち、米日両国の「国家テロ」や「海賊行為」にたいする批判を後景におしやり、拉致問題を公然と認め、「米朝枠組み合意」および「核拡散防止条約(NPT)」を無視して核開発をしてきたことを告白したのであった。このことは、自国の経済的危機をのりきるために緊急な経済援助を日本政府から受けるという意図の明白なあらわれにほかならない。
 在日朝鮮人同胞よ。諸君がまずもって弾劾すべきは、キム・ジョンイルが日本政府からひもつき援助を引き出すために、日本国家の侵略行為・植民地支配・戦争犯罪についての賠償請求を後景におしやり朝鮮労働者人民の日本帝国主義への積年の怒りに水をかけるというこの裏切り行為についてである。
 階級への献身・革命への献身と個人への崇拝が相容れぬことは、日本の反スターリン主義革命的共産主義運動の創始者が、すでに半世紀も前から明らかにしていることである。いまこそ諸君は、「偉大な将軍様」の呪縛からみずからを解き放ち、朝鮮人民の革命的統一をめざした永続的闘争に、決意も新たに決起すべきである。

 (5)
 「北朝鮮の核開発」をめぐっても、いま政府と政治家どもとジャーナリズムが大騒ぎしている。キム・ジョンイル政府の核兵器開発はあらゆる意味で反人民的である。そんなことはわかりきっている。だからといって、世界で最大の核兵器をもち「大量破壊兵器」を保有して、USナショナリズムをあおりたて国益第一主義のもとに、自国に逆らう諸国を世界中で恫喝してまわっているアメリカ帝国主義権力者に、北朝鮮の「核兵器開発」を非難する資格などはありはしないのだ。そして、世界唯一の被爆国であるにもかかわらず、アメリカ軍の核ミサイルで自国を「防衛」し、この在日米軍の核軍事力を周辺諸国にたいする外交上のバーゲニング・パワーに使っているのが、日本政府なのだ。いや、いつでも核兵器に転化できるように大量のプルトニウムを蓄蔵しているだけでなく、「非核三原則の見直し」や「核兵器保有は合憲」といった発言を「政府首脳」が平然とくりかえしているのが、日本国家なのである。このような核武装志向≠フ日本政府が、カマトトぶって他国の核武装を非難するなどは、片腹痛いというものだ。このことだけは、何べんでも声を大にして叫ぶべきではないか。
 われわれは、アメリカ帝国主義の核武装強化と、対イラク軍事侵略・核攻撃に、絶対に断固として反対する。それと同時に、英・仏帝国主義や中・露の核戦力強化にも反対する。そして最後に、これらに対抗するための北朝鮮やイラクの貧者の核兵器開発≠ノも反対する。
 在日朝鮮人同胞よ。いまこそわれわれとともに、キム・ジョンイル政府の「核兵器開発」に反対すると同時に、このような「核兵器開発」を口実にしたアメリカ・ブッシュ政権による朝鮮人民にたいする「核攻撃」の恫喝に反対してたたかおうではないか!

 (6)
 われわれ日本の革命的左翼は、日本帝国主義権力者とその走狗どもによる民族排外主義の煽りたてに、なによりも危機感と憤激を燃やしている。新聞やテレビは、毎日のように北朝鮮を「テロ国家」にしたてあげるためのキャンペーンをくりひろげている。週刊誌には「これは北朝鮮との戦争だ」という見出しが踊っている。この民族排外主義は、日本を「戦争のできる国家」として飛躍させるためにこそ鼓吹されているのだ。かつての日本帝国主義のアジア侵略を「欧米からの東亜の解放のためだった」などと強弁している連中が、その先頭に立っている。「俺だったら戦争をしてでも拉致された人びとを取り戻す」――このように吠えたてたタカ派都知事・石原の暴言は、戦争好きのネオ・ファシストの咆哮(ほうこう)そのものだ。
 われわれはチマ・チョゴリを着ている朝鮮学校生にたいするネオ・ファシストや右翼無頼漢の暴行や脅迫を断じて許さない。革命的教育労働者や学生は、朝鮮学校の仲間とともに、このような嫌がらせを体を張って阻止するだろう。われわれは「朝鮮人強制連行などなかった」「従軍慰安婦などなかった」などと言いくるめて恥じない「自由主義史観」グループの跳梁と彼らの作成した破廉恥な「歴史教科書」の採択を絶対に許さない。
 在日朝鮮人同胞は、日本帝国主義による非道の強制連行によって心ならずも日本に定住させられて以降、一貫して日本のたたかう労働者階級の戦友であり兄弟であった。われわれ日本の革命的左翼は、その共苦をけっして忘れない。
 在日朝鮮人同胞よ。狂気に満ちた民族排外主義の鼓吹に抗して、ともに力を合わせてたたかおうではないか! いまこそキム・ジョンイル朝鮮型スターリニスト政権の呪縛からみずからを解き放ちつつ、全世界の・そして日本の革命的労働者人民とともに、「アングロ・アメリカン帝国主義のイラク攻撃阻止」「日本の参戦阻止・有事法制定阻止」の闘いを爆発させようではないか!
 プロレタリア国際主義に立脚した日本と朝鮮の人民の戦闘的連帯万歳(マンセイ)!
 (10月21日)


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