第1884号(2005年9月12日)の内容

<1面>
ネオ・ファシズム体制の飛躍的強化を許すな!
 戦争=改憲翼賛の大濁流を突き破る闘いの一大前進を!

イラク占領米軍・CIAが仕組んだ8・31シーア派信徒大虐殺謀略弾劾!
<4面>
<ドル支配>に挑戦する胡錦濤の中国

人民元切り上げ・通貨バスケット制導入の波紋

<5面>
労働者人民に新たな犠牲を強いる生活保護制度改悪を許すな
<2面>
全学連119中央委に結集せよ
8・7 第43回国際反戦集会 報告 北海道/関西
<3面>
「カトリーナ」が暴きだした「自由の国」アメリカの真実
<6面>
破綻したJPSにしがみつく郵政公社当局
「個の時代」の労働運動とは
Topics 郵政8万人削減を公言する民主党
<8面>
疎外された労働の中で自己を見つめて
<7面>
万華鏡2005――情勢の断層を読む
◆メルケル・メカケる
最大限利潤の法則
◆亡国の維持策
◆戦争狂の「DNA」
◆在日の反骨

週間日誌〈世界の動き・日本の動き〉
  「解放」最新号
 
































  


ネオ・ファシズム体制の飛躍的強化を許すな!

戦争=改憲翼賛の大濁流を突き破る闘いの一大前進を!

ファシスト式大衆操作術を弄する小泉
 「郵政民営化こそすべての改革の本丸。改革を止めてはいけない」――変人宰相・小泉は、ただただこの言葉を絶叫することによって選挙戦での勝利を果たそうとしている。民主党の「マニフェスト」に対抗してうちだした自民党「マニフェスト」には、十一月にも「自民党憲法草案」をうちだし「国民投票法」を早期に制定することが明記されている。にもかかわらず、小泉は憲法大改悪の企みについては触れようともせず、年金、行財政改革(消費税税率の引き上げ)、イラク派兵、東アジア外交、対北朝鮮問題等々についての野党の追及を封殺し、みずからの失政を、「争点にしない」と称して隠蔽しつづけている。
 小泉の「改革姿勢」が二〇〇一年の政権成立当時の人気に匹敵する支持を集めている、とマスコミを操作してあおりたて、選挙で自・公が過半数を占めたならば、憲法改悪や増税をはじめとした新たな攻撃に一気呵成にうって出ることを小泉・自民党執行部はたくらんでいるのだ。
 洪水のように流布されているマスコミの「自公圧勝」などという宣伝にもかかわらず、労働者・勤労人民のあいだには、小泉政権にたいする不信と怒りがますます高まっている。自民党幹事長・武部の「〇七年からの消費税税率引き上げ」という本音発言と、「自分は任期どおり来年九月には首相を辞める(だから〇七年のことは知ったことではない)」という小泉の居直り発言を見よ! これをも契機として、また郵政民営化法案に反対した自民党造反議員の追い落しのためにくりひろげられた強権的な策動を目のあたりにして、小泉の専横ぶりにたいする労働者・人民の反発と怒りが渦まいている。
 自民党内で郵政民営化法案に反対票を投じた議員への公認とり消し、棄権・欠席議員をふくめての郵政改革法案賛成の踏み絵を踏ませ誓約書まで書かせるというかつてない締めつけ。造反議員への対立候補(いわゆる刺客)を三十三の選挙区で、各地方組織の意向を斟酌(しんしゃく)することなく落下傘方式で立候補させるという強硬策。そもそも自民党党内抗争での敗北の結果として参議院で法案が否決されたことをもって、内閣総辞職ではなく小泉の一存で衆議院を解散するという議会政治のルール≠すらふみにじった手口。「非情」を自認する小泉のこのファシズム的な強権的手口への不信が、人民の内から広範に湧きあがっている。
 「改革を止めるな」のワンフレーズを、いかに批判され反論されようともただただくりかえす。これこそ「ウソも百ぺんくりかえせば真実になる」(ゲッベルス)というファシスト式大衆操作術そのものではないか。戦争と暗黒の強権政治と大リストラ下の生活苦・生活不安のもとで閉塞感におちいっている労働者・人民に、現状否定・現状打破の「革新性」が小泉の側にあるかのように印象づける、ヒトラーやムソリーニの「擬似革命性」のおしだしをそっくりなぞった手口を、小泉は駆使しているのだ。
 自民党政府が、日本型ネオ・ファシズム統治形態の新たなレベルでの強化のために、「危機管理」を名目にしてつくりあげてきた首相専決の行政システムを徹底的に活かしながら、小泉ネオ・ファシスト政権はおのれの野望を次つぎとおし通そうとしている。ブッシュ帝国の全面的なバックアップを受け、これを命綱として。
 小泉・自民党執行部の強硬策と攻勢をまえにして、「政権交代選挙」を看板に年金・税制問題での「論戦」を挑んでいる民主党をはじめとした野党勢力は、腰くだけとなっている。この彼らもまた、「論戦」をつうじて「改憲」=戦争翼賛勢力としての、対米自立℃u向のネオ・ファシスト党としての本性をむきだしにしつつある。
 まさに戦争と恐怖政治と一層のリストラ地獄の危機が、いま、そこにさし迫っている。ネオ・ファシストどもの跳梁を許すな! 労働者・人民を愚弄するファシスト流大衆操作を許すな! 奴らを通すな! 侵略戦争と「改憲」翼賛の大濁流を打ち破れ! 選挙戦の喧騒を突き破り、いまこそ改憲阻止・反戦反安保・反ネオファシズムの闘いに決起せよ!

(以下、見出し)
日本国家の生き残り戦略をめぐる権力抗争

対米追従一辺倒の小泉に「日本の主体性」を対置する岡田=小沢の民主党

日米の「対中攻守同盟」強化への中国の巻き返し

政界大再編をかけての角逐

小泉ネオ・ファシズム政権を打ち倒せ!
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イラク占領米軍・CIAが仕組んだ8・31シーア派信徒大虐殺謀略弾劾!

 八月三十一日午前十時ごろ、イラク・バグダッドにおいて、イスラム教シーア派の聖地カジミヤ・モスクでの巡礼に向かっていた数千名の信徒が、「スンナ派の自爆テロ犯がまぎれこんだ」という流言蜚語(りゅうげんひご)によってパニックに陥り、九六五名もが死亡するという大惨事が惹き起こされた。
 午前八時ごろには、巡礼に集まる信徒を標的として迫撃砲弾が撃ちこまれ、七名が虐殺された。その二時間後のことであった。「自爆テロ犯」という声に驚いた信徒たちが避難しようとしたところ、チグリス川にかかるアインマ橋の西側に設置された米軍の検問所に阻まれ、彼らは身動きもとれずに橋の上での圧死・転落死・水死を強制されたのだ。
 この事態は、〇四年三月二日のシーア派アシューラー祭に集まった信徒を標的とした謀略テロ(迫撃砲弾と爆弾)にひき続く、イラク占領米軍・CIAが仕組んだ一大謀略にほかならない。われわれは、再び三たび強行された米軍・CIAによる、スンナ派とシーア派の宗派間対立を煽るための一大謀略を、怒りをこめて弾劾する。
 時あたかも八月下旬、イラク憲法草案の起草をめぐって、各宗派・民族による「連邦制」を主張するシーア派のイラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)やダアワ党およびクルド人諸勢力と、これに反対するスンナ派諸勢力との利害対立が一挙に先鋭化した。シーア派指導者シスターニ師は、アメリカの影響力を排した「真の民族和解政府」を樹立するという展望にもとづいて、当面は親米のクルド人勢力を抱きこむために彼らが要求する「連邦制」方式を採用することを承認した。これにたいして、少数派に追いこまれること必定のスンナ派諸勢力は、国民投票で「拒否」を明示することを明らかにした。とりわけスンナ派武装勢力が猛反発した。スンナ派のイスラム聖職者協会も、この憲法草案を「アメリカの草案」と非難しただけでなく、イスラム教を「主要な法源の一つ」ではなく「主要な法源」と明記せよ(クベイシ師)と要求した。〔八月二十八日にいったん決裂し、暫定議会で草案を採択したものの、両派は憲法草案の策定をめぐって再び協議している。〕しかも、スンナ派武装勢力と相呼応して、サドル派マフディ軍がSCIRIにたいして武力攻撃をしかけた。
 まさに、憲法起草をめぐってシーア派内の分裂、シーア派・クルド人勢力とスンナ派との対立というかたちで、宗派間・民族間の対立が一挙に激化したのである。
 この事態につけこんで、イラク占領米軍・CIAは、破綻したイラク占領支配をなおも続けるという思惑にもとづいて、「宗派間対立・テロの激化」なるものを煽りたてるために、シーア派の宗教行事(第七代イマームのムーサ・カジムの殉教を悼(いた)む巡礼)の場を利用しての一大謀略を強行したのだ。
 だが、ブッシュ帝国の腹黒き思惑をスンナ派とシーア派の指導者・ムスリムたちは見抜き、イラク人民に警戒を呼びかけている。シスターニ師が「国民の団結と冷静な対応」を呼びかけ、国防相ドレイミ(スンナ派)も「(事件は)宗派間対立によるものではない」と強調した。宗教儀式に集まったムスリムにたいする無差別虐殺という悪業がムスリム以外の者による凶行であることを、ムスリムたちは知りぬいているのだ。
 今や、ヤンキー帝国主義のイラク占領支配は、完全破綻の局面にたちいたっている。イラク民主化復興プログラムでは、新憲法にもとづいて今年十二月に総選挙・本格政権の樹立という構想が提示されている。シーア派・クルド人―スンナ派の対立激化という条件下ではあれ、いずれにせよ反米ないし非米の新政権が誕生することはまちがいない。ヤンキー帝国主義による「イラク民主化」の策動は石油利権の支配という野望とともに大パンクをつきつけられている。しかも、7・7ロンドン地下鉄・バス爆破大謀略の強行にもかかわらず、盟友たるブレア政権のアメリカ離れ=大陸EU諸国への接近≠ニいう外交姿勢を変えることはできなかった。日米安保同盟の鎖で縛りつけられているポチ公・小泉政権のみが、ブッシュ帝国につき従っているにすぎない。
 パレスチナでは、ブッシュ=シャロンが実行したガザ地区からのイスラエル入植者の撤退にたいして、当のシャロン政権内や与党リクード内から反発が噴出し、シャロン政権じしんが危機にたちいたっている。右派≠ノ反発されたシャロンは、ペレスの労働党の一部との連携をも余儀なくされている。同時に強行されているヨルダン川西岸地区の強奪=分離壁建設にたいしては、ハマスをはじめとする戦闘的パレスチナ人民がPLOアッバス指導部の抑圧に抗してたたかっている。ブッシュ=シャロンの「分離壁による和平」策動も破綻しているのだ。
 この局面を強行突破するためにこそブッシュ帝国は、ロンドンにつづいてバグダッドでも謀略を敢行したのだ。けれども、もはや時遅し。ブッシュ帝国ののりきり策は砂上の楼閣にほかならない。
 すべての労働者・学生諸君! ブッシュ帝国による8・31謀略を弾劾し、イラク占領支配の継続を弾劾せよ。日本国軍の居座りを許さず、イラクからの撤退をかちとろう。
 イスラミック・インター‐ナショナリズムにのっとってたたかうムスリムの仲間たちよ。宗派間対立を超えて反米反占領の闘いに決起せよ。わが日本の労働者・学生は、諸君らと連帯して、イラク反戦闘争を断固として推進する!
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<ドル支配>に挑戦する胡錦濤の中国

人民元切り上げ・通貨バスケット制導入の波紋

1 米・欧への対応落差

 中国政府・人民銀行(中央銀行)による通貨・人民元の切り上げ以降一ヵ月余の現在、人民元の対ドル相場は上昇率〇・二%ほどであり、ほぼ安定しているかにみえる(八月二十六日、最高値の一ドル=八・〇九六五元となった)。中国金融当局の為替市場操作によって、人民元の上げ幅は微小に抑えこまれている。
 こうした人民元・ドル相場の現状にたいして、対中貿易収支赤字の厖大な膨れあがりに焦りをつのらせているアメリカ政府や独占資本家たち、および議会の民主党や共和党議員たちから、人民元の「追加切り上げ」を要求する声が一段と高まっている。(アメリカの貿易収支赤字のうちでも断トツの第一位を占める対中国赤字は〇四年末で一六二〇億ドル、これは第二位の対日赤字の同七五二億ドルの二倍強に達する。)
 これにたいして中国の胡錦濤政府は、「人民元の漸進的改革」を唱え、当面は現状を維持しつつ、相場の推移を見守る慎重姿勢をとっている。とはいえ、沿岸都市部においてバブル経済の過熱が進行している現状からして、バブルの破綻を未然に防ぎ止めるための金融引き締め策として、中国政府は元の切り上げをさらに実施せざるをえないのである。
 中国政府が断行した今回の人民元切り上げ(七月二十一日)は、その上げ幅の小ささ(対ドルでわずか二・一%)にもかかわらず、中国の金融政策上の大転換を画したものといえる。人民元切り上げと同時に、一九九七年以来とられてきた人民元相場の米ドル・ペッグ制という事実上の固定相場制が改められ、管理フロート制への転換が画された(相場の変動幅を上下〇・三%の範囲内に設定)。相場管理にあたって米ドル以外にユーロ・円・韓国ウォン・ロシアのルーブリなど十一の通貨の動向を参考にするという通貨バスケット制の導入が決定され即日実施された。これは、国際貿易取り引き・決済とそのための政府・金融当局の外貨準備とを従来のドル一本槍基調からユーロにかなりの比重を移すものに切り換える、という胡錦濤政権の意志の決然たる宣言にほかならない。アメリカ帝国主義の世界経済支配の基礎をなす<ドル体制>を打ち砕くという意図をも込めたこの宣言は、今日の世界経済・国際金融に占める中国の地位からして、実際にも<ドル体制>の根底的崩壊をもたらすインパクトとなるにちがいないのである。

以下、見出し

2 バブル経済鎮静化のための方策

3 ドル体制℃繿フ化を狙う積極策

4 噴出する中国経済の構造的諸矛盾
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ブッシュへの贈り物

「カトリーナ」が暴きだした「自由の国」アメリカの真実

貧困層を見殺しにしたブッシュ政権を弾劾せよ

 「われわれにとってのツナミだった」――高潮によって壊滅的被害を受けたアメリカ・ミシシッピ州ビロクシー市の市長が悲痛な叫びをあげた。八月二十九日にルイジアナ州ニューオーリンズ付近に上陸した超大型ハリケーン「カトリーナ」は、アメリカ史上最大の被害をもたらした。ルイジアナ州・ミシシッピ州などのディープサウスを中心にして、被害地域は約二三万三〇〇〇平方`と日本の本州に相当する範囲におよんだ。直撃された人口四八万人のニューオーリンズ市は、海抜ゼロメートル地帯に位置しているがゆえに、堤防決壊によって市内の八割が水没し、一万人以上が死亡しているとさえいわれている。今なお一五〇万もの人びとが避難生活を余儀なくされている。
 それだけではない。メキシコ湾岸に集中しているアメリカの石油施設のほとんどが一挙に生産停止に追いこまれた。一バレル=七〇ドルを突破した原油価格の超高騰に決定されてハリケーン被害の前から過去最高水準に達していた米国内のガソリン価格が、さらにハネ上がっている。アメリカ経済は致命的打撃を受けているのだ。
 このハリケーン惨禍のさなか、大統領ブッシュは、被災から四日もたった九月二日になってようやく夏季休暇をきりあげ、被災地を視察した。しかし、「治安悪化」を理由にして、ニューオーリンズ市についてはヘリコプターからの高見の見物≠ナお茶を濁した! 視察中、彼は「想像した以上に悪い」とつぶやいたという。何を言うか! ブッシュ政権の無為無策・社会的弱者きりすての新自由主義的政策の実施こそが、激甚な被害をもたらしたのだ!
 ミシシッピ川が運ぶ土砂によってつくられた砂洲と低湿地帯の上に発展したニューオーリンズ市は、市の大部分が海抜ゼロメートル以下にあるがゆえに四周を堤防で囲まれている。この堤防が高潮と豪雨によって決壊してしまった。ハリケーンの規模「カテゴリー3(風速49〜58b)」を想定してつくられていたにすぎない堤防は、「カテゴリー4(風速58〜69b)」以上といわれている「カトリーナ」のまえにはひとたまりもなかったのだ。
 そもそも州・市当局が二〇〇一年以降、ブッシュ政権に堤防を補強するために四億九六〇〇万ドルの予算を要求していたにもかかわらず、ブッシュ政権はこの要求をにべもなくはねつけ、半分以下の一億六六〇〇万ドルしか認めず、他の治水関係予算も六分の一に削減した。この治水対策の軽視こそが堤防決壊―全市水没の直接的原因なのだ。なぜ削減したか? その理由はわかりきっている。膨れあがるイラク・アフガン戦費を確保するためだ。
 それだけではない。ニューオーリンズ市当局は、二十八日に避難命令を出したものの、一〇万人余りが市内になおとどまらざるをえなかった。これが死者がきわめて多くなったことの原因だ。多くの人民が市から脱出したくとも、そのための車も宿泊先もお金もないからである。
 昨年の防災訓練で連邦緊急事態管理庁(FEMA)・市当局は脱出手段をもたない貧困層が一〇万人程度存在していることを掌握していた。にもかかわらず、彼らは避難命令を形式的に出しただけで、脱出用の交通手段を用意するとかの手をなんら打たなかった。彼らは貧困層を放置し見捨てたのだ。
 さらにこれに輪をかけたのが救援態勢の決定的立ち遅れである。九月四日までにニューオーリンズ市内のスーパードームや国際会議場はあわせて四万人の避難民であふれ返った。彼らは食料・水、医薬品の援助物資もほとんど与えられることなく放置された。こうしたブッシュ政権・行政当局の無為無策のゆえに、老人・子供からバタバタ倒れ、餓死者すらうみだされた。また、避難所は無法地帯≠ニ化し、略奪・暴行・レイプが横行している。警官すら略奪に加わっている。
 本来ならば、まっ先に救援に駆けつけることになっている州兵はいない。ミシシッピ州から四〇〇〇人、ルイジアナ州から三七〇〇人の州兵が、イラクに派遣されているからだ。「四万人の支援部隊が来るというが、来ないじゃないか」とニューオーリンズ市長は悲鳴をあげた。
 なんと、FEMA長官ブラウンが被害の拡大を知ったのは洪水が起きてから三日後の九月一日朝だという。「対テロ戦」を内政・外交の第一義的課題とするブッシュ政権のもとで、新設された国土安全省にFEMAは統合され格下げされた。天災対策は明らかに二の次にされたのだ。
 まさしくブッシュ政権こそが、アメリカの貧困層を無惨な死と困窮に追いやったのである。

<貧富の格差>と<人種差別>の爆発的露呈

 「ハリケーンで生き残った者と死んだ者との違いは、貧しさと肌の色だ。」(米民主党下院議員エライジャ・カミングス)
 たとえ「退避命令」が通告されたとしても、自家用車も避難する資金も持たぬ貧しき人びとは、逃げる術がなかった。ブッシュ政権によって、むざむざと見殺しにされたのだ。
 最も被害が大きかったミシシッピ州は、アメリカのなかでも貧困度が一位、ルイジアナ州は同四位とされる地域だ。まるで戦場のごとき地獄絵図と化したニューオーリンズ市では、人口四八万人のうち二割以上の人びとが年間所得一万ドル以下だったという。〔アメリカの大企業経営者の平均年収は一一八〇万ドル、一〇〇〇倍以上の格差!〕そして六〜七割が黒人だ。最下層の労働者・失業者は避難もできず、黒人にたいする差別意識が救援の遅れの一因となった――これぞアメリカ社会の縮図というべきである。アメリカ国税調査局の公式発表(八月三十日)でさえ、「貧困層」(四人家族で年収一万九三〇七ドル以下)は四年連続増の三七〇〇万人、前年より一年間で一一〇万人も増えたとされる。この<貧富の格差>および<人種差別>という時限爆弾≠ェ、ハリケーンを導火線として、ついに爆発したのだ。
 「生きるためには略奪しあわなけりゃいけないんだ!」とテレビカメラに向かって叫びし黒人少年、銃を握りたるか。被災地でかろうじて生き残った貧しき黒人同士が「避難所」のなかで奪い合い、病躯の者や老人や幼児らが見捨てられ死んでゆく。銃を手にした者による強盗・レイプの横行。……被災を契機として現出したこうした荒廃を「アフリカのようだ」などと嘆くことなかれ。直視せよ、これこそアメリカが他国におしつけようとしている「自由と民主主義」の発露なのだ。
 「自己防衛のため」という名による銃社会≠フ正当化。弱肉強食の競争を強いられている新自由主義経済。「オーナーシップ社会の実現」の名による金持ち優遇≠フ徹底化。「敵」とみなした国家に一方的に軍事攻撃をしかける先制攻撃戦略とそこにつらぬかれているユニラテラリズム。……ブッシュ政権こそが、アメリカ社会の分裂と荒廃を促進してきたのである。
 「カトリーナ」の一撃によって招来した南部の黒人貧困層の悲劇こそ、「世界一豊かな超大国」と自称しているブッシュ帝国の暗黒面=真の姿にほかならない。これぞ、「自由と民主主義の拡大」の名においてイラクのムスリム人民を虐殺したるG・W・ブッシュへの神からの贈り物≠ネるぞ!
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万華鏡2005――情勢の断層を読む

最大限利潤の法則

財界のボロ儲けこそ民主的改革の原動力?

 「資本主義企業一般の運動原理は利益の最大限の追求だが、果たしてどういう条件を備えたときに、自らの利益を最大化することが可能になるのか」――こう設問しているのは、日共御用学者・石川康宏(「自立と平等の『東アジア共同体』に向けた日本の役割」、『前衛』九月号所収)。彼は自答する。かつてはそれは「植民地の領有」だったが、「<植民地なき独占資本主義>は自らの利益のためにこそ旧植民地との友好を築く」ことだ、と。
 「東アジア自由経済圏」構想をうちだしている日本経団連の奥田が小泉の靖国参拝に苦言を呈したり、財界のオピニオンリーダー≠自任している経済同友会が、憲法改定を唱える他方で、中国が主導して推進している「東アジア共同体」構想に真っ向から反対しているアメリカを「自国を含まないASEAN+3という枠組みも敵視すべきでない」と批判していること。これらの事態に着目した石川は、それを「東アジアの成長と自立への強い志向は、日本の経済界に新たな変化を起こす力となっている」ととらえ、それゆえの「財界の苦悩」だと言う。
 そして、次のようにさえ言ってのける。「確かに大企業・財界の利益追求が……靖国公式参拝への批判の原動力となっている」。財界はすでに東アジアにおける「脱ドルの流れ」に「寄与」する「実績をつくっている」。これと同様のことが、「歴史問題における謝罪と補償」、「アメリカの意向にとらわれない自主的な外交姿勢の形成」、「平和の拠点としての日本づくり」などの「日本社会の民主的改革」の問題についても「起こり得る……可能性と展望」がひらけている。したがって、「財界内部に東アジアとの共同を重視する力を大きく育てる」ために、日米同盟強化を許さない「強固な世論」をつくりだしていくこと、これこそが「現時点でのわれわれのたたかいの焦点」なのだ、――と。
 要するに、現時点の憲法改悪や「安保の侵略的強化」に反対する平和運動の任務は、ブルジョアジー本流に圧力をかけ、「自らの利益」=最大限利潤を獲得するためには「東アジア共同体」建設にむけて奮闘することが一番、と納得させることにある、と石川は日共の外交政策の代案を「理論」的に基礎づけているのだ。投資コンサルタントと化した日共御用学者の面目躍如! しかも、アメリカを排除した東アジア共同体≠フ創出を企む中国・胡錦濤政権の手先そのもの! ここにこそ、日共がおしすすめる野党外交の本質がある。
 ところで、法則を物神化したスターリンは、かつて「帝国主義戦争の不可避性」という法則の「作用範囲を制限する」ために、直接には「当面の戦争を未然に防ぎ、それを一時ながらもっと先に延ばす」ことを目的にして「平和擁護運動」を位置づけ提唱したのであった(『ソ同盟における社会主義の経済的諸問題』一九五二年)。ところが、現代の転向スターリン主義者=修正資本主義者の党・日共の御用学者たる石川は、いまやスターリンとはまったく反対に、反戦・平和の闘いを「戦争の不可避性」の根源≠ニされる独占資本主義の「最大限利潤の法則」が最大限作用するための「条件」を整えてやるために、すなわち最大限利潤の法則の作用範囲を拡大してあげるために∴ハ置づけるにいたっている。これが財界と中国に媚を売るという日共の「利益を最大化する」ための「条件」だ、と思いこんでいるというわけ。笑止千万!
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