第2424号(2016年6月27日)の内容

<1面>
改憲・アベノミクスを粉砕せよ
 労働者・学生に戦争と貧窮を強制する安倍政権を打ち倒せ
<4面>
人民を欺く「1億総活躍プラン」
 アベ式「同一労働同一賃金」論の正体
<5面>
「安心」とは名ばかりの「保育・介護の整備」策
Topics 消費税率8%容認の日共「財源提案」
◎マスゾエ切ってマキゾエ回避
<6面>
「新たな利益成長軌道」を呼号するNTT経営陣
<2面>
「米軍Xバンドレーダー撤去!」
 京丹後で労・学・市民が決起 6・5
<3面>
学園だより
 愛大学生大会で改憲反対決議 6・9
■NATO「東方拡大」に逆上するプーチンの核恫喝
■新型核兵器開発に突進するオバマ政権
<7面>
『組織論序説』の前衛党規定について
◎週間日誌〈世界の動き・日本の動き〉
<8面>
党員への飛躍のための決意
 組織創造主体の立場に立つ
前衛党組織の創造主体へ飛躍する決意 革マル主義を貫くぞ

 「解放」最新号   


































  


改憲・アベノミクスを粉砕せよ

労働者・学生に戦争と貧窮を強制する安倍政権を打ち倒せ

6・19「改憲阻止!」「女性殺害弾劾!」闘う労学が首都を席巻
(芝公園出口)詳報次号
6・19「海兵隊撤退!」「基地撤去!」6万5千沖縄人民の声轟く
(那覇市奥武山公園陸上競技場) 詳報次号

 参議院選挙を目前にひかえて安倍政権は、「アベノミクスのエンジンを最大限にふかしていく」などと吹聴している。いまや誰の目にも歴然としているアベノミクスの大崩落。にもかかわらずこの政権は、「アベノミクスは結果を出している」などという集票目当てのデマカセを弄して労働者・人民の目をあざむくことに血道をあげている。第九条の破棄を柱とする憲法大改悪を企んでいるネオ・ファシスト政権は、自民党・公明党の議席を増大させるのみならず、おおさか維新・日本のこころを糾合し改憲推進連合を形成することに躍起になっているのだ。
 すべての労働者・学生・人民諸君! アメリカとともに戦争のできる日本国家への飛躍をかけたこの一大反動攻撃を絶対に許してはならない。まさに闘いは正念場を迎えている。いまこそ総力を結集して憲法改悪阻止の火柱をうちあげよう。この重大な局面において代々木共産党指導部は、「野党統一候補の当選」を第一義にして「安保反対」も「ファシズム反対」も掲げることなく集票運動に埋没している。この議会主義的腐敗をいっそう深める日共翼下の反対運動をのりこえ「改憲阻止・戦争法撤廃!」の闘いを断固としておしすすめよう。元米海兵隊員による女性暴行・殺害を満腔の怒りをもって弾劾せよ! 辺野古新基地建設を断固阻止せよ! 格差拡大をもたらし人民に貧困を強制するアベノミクスを打ち砕け!
 6・18―19の両日にわたって全国各地の労学統一行動に、たたかう労働者・学生が総決起した。6・19沖縄県民大会にも元米兵による女性殺害にたいする怒りに燃えて六万五〇〇〇名の労働者・学生・人民が決起した。さらには、この沖縄の闘いとかたく連帯して国会前集会がかちとられた。わが革命的左翼を先頭とするこれら巨万人民の闘いを引きつぎ、憲法改悪阻止・反戦反安保のうねりをさらにいっそうおしひろげようではないか。いまこそ反ファシズム統一戦線を創造し、もって安倍ネオ・ファシスト政権を打ち倒せ!

米―中・露激突下で憲法改悪に突進する安倍政権

労働者・人民をあざむくアベノミクス「新三本の矢」

 衆参両院で三分の二以上の議席を獲得するために、安倍政権はあらゆる術策を弄している。この三年間にわたって貧窮化を徹底的に強制されてきた労働者・人民に期待感≠喚起することを狙って、「アベノミクスで経済が好転したのは事実」だの「新三本の矢で経済好循環を回していく」だのとほざいている。だが、こうしたアベの言辞がまったくのウソ八百でしかないことは、現実をもって赤裸々となっているではないか。
 六月中旬いこう、日経平均株価は一万五〇〇〇円台に急落し、一ドル=一〇三〜四円台の円高が進展している。この円高進行とあいまって消費者物価指数も二ヵ月連続でマイナスに落ちこんだ。株式・為替相場が民主党政権時代の水準に回帰した、この事態こそは、株高と円安を誘導し、物価上昇率二%、GDP成長率二%を二年で実現することを目標=公約として鳴りもの入りで喧伝してきた黒田・日銀の「異次元金融緩和」政策の凄絶な破綻を示すもの以外のなにものでもない。安倍政権と黒田・日銀によるアベノミクス諸政策の最期の最期を告げ知らせる弔鐘が、いまや打ち鳴らされているのである。
 こんにち、アベノミクスの基軸をなす「異次元緩和」政策の大破綻が露見しているもとで、これをおし隠し弥縫することを狙って安倍政権は、アベノミクス「第二ステージ」と称する「新三本の矢」なるものをおしだしている。だがこれじたいが、まったく反人民的な許しがたいものである。「一億総活躍社会」などという空ぞらしいシンボルをふりかざしながら安倍政権は、@二〇二〇年にGDP六〇〇兆円、A出生率一・八、B介護離職ゼロなどの謳い文句を並べたててはいる。
 そもそも、「六〇〇兆円にGDPを増やす」などと安倍は言うが、みずからが「GDPを増やし財政基盤を強くすれば、防衛費を増やすことができる」などと明言しているように、その本音は防衛費=軍事費の増大をテコにした戦争をやれる国家≠ニしての「強い経済」の基盤をうち固めることにこそあるのは明白である。一億全員が軍国日本に奉仕せよ≠ニいうのが、「一億総活躍社会」なるものをがなりたてる底意にほかならない。
 それだけではない。「出生率一・八」を標榜しての「子育て支援」や「介護離職ゼロ」を看板とする「社会保障」なるものは、少子高齢化≠フ進展に危機感を募らせている独占ブルジョアジーの意を体したものにほかならない。「二〇一四年から三〇年にかけて若年層を中心に八一八万人もの労働力が減少」すると予想される、「人口減少は国内需要を低下」させ「国内外からの投資が困難」となり「資本蓄積ができなくなる」という悲鳴を独占ブルジョアどもはあげている(『二〇一六年版経労委報告』)。要するに少子高齢化が日本資本主義の致命的な衰退をもたらす≠ニいう焦燥感を募らせている独占ブルジョアどもの意向を汲みとって、安倍政権は、日本帝国主義の危機突破策として「一億総活躍社会」を叫んでいるのだ。そのことごとくが、労働者・人民をだますための画餅、いや、詐欺商法まがいのキャッチコピーでしかない。
 安倍のいう「生涯現役社会」なるものもまた、同様の類である。「財政危機」を口実として政府・支配階級は、社会保障をどしどしと切り捨てている。退職し年金や生活保護費だけをあてにして老後をすごし国家財政を食いつぶす老人は許さない、そんな社会保障費は出したくないから死ぬまで働け≠ニいうのが安倍政権・独占ブルジョアジーの本音なのである。(非正規雇用労働者は退職してもほとんど年金が得られないか、得られてもきわめて低い。ゆえに死ぬまで働くことを強制されるのだ。)安倍政権はまた、「女性の活躍できる社会」なるものを呼号している。一方では優秀な女性≠フ企業幹部への登用をおしだしながら、その他面では、圧倒的多数の女性労働者を、資本家が求める低賃金の労働力として活用することを企んでいるのだ。女性労働者を愚弄しきったこの方式こそは、高齢者や外国人の雇用増加策と同じであって、安倍の言う「一億総活躍社会」なるものは、人口減少下での低賃金・底辺労働力の捻出策≠「がいのなにものでもないのだ。
 そもそも「少子化社会」をもたらした張本人は、ほかならぬ安倍自民党政権と独占資本家ではないか。労働諸法制を改悪し、全労働者の四割・二〇一五万人を非正規雇用労働者に突き落とし、そのうちの約半数を年収二〇〇万円以下のワーキングプアに叩きこんだのはいったい誰だ! 若年労働者が結婚できない、結婚しても子どもはつくれない、子どもを育てることができない、子どもの貧困が増大している。こうした事態を生みだしたのは安倍政権なのである。
 いまや全国の子育て世帯のうち生活保護費以下の低収入に苦しんでいる貧困世帯が一四%も存在している。安倍をはじめとする歴代自民党政権が招きよせたこの悲惨な貧困の現実に頬被りして、がなりたてられている「出生率一・八」の号令をわれわれは怒りなくして聞くことはできないのである。
 「介護離職ゼロ」の社会保障≠ネるものも労働者をバカにしきったものだ。「財政危機の打開」を口実として安倍政府は一五年四月に、社会保障費を削減し二二七〇億円を抑制するものとして介護事業所に支払う介護報酬を二・二七%引き下げた。これにともなって政府・厚生労働省は、特別養護老人ホームへ入所できる条件を、これまでの「要介護一」以上であれば可能であったものから「要介護三」以上へと厳しく変更した。さらに介護予防訪問介護サービスと介護予防通所介護サービスを保険給付の対象から除外したのである。このもとで、比較的介護度が「軽度」とみなされた高齢者のみならず「中・重度」の高齢者もが介護サービスからしめだされ、その結果として、こうした人びとにたいする家庭での介護負担が増大することは明らかだ。こうして被介護者を抱える労働者の多くが離職を余儀なくされるのだ。なにが「介護離職ゼロ」だ!
 安倍政権が「地域医療・介護総合確保推進法」にのっとって強行してきた介護報酬の切り下げのもとで、小規模・零細の老人福祉・介護事業所が七十六件(一五年)という最多の倒産に追いこまれた。のみならず介護報酬の削減決定の直前に四〇〇〇件を超える事業所が廃止届けを出している。こうした介護報酬の削減にともなう介護事業所の倒産・縮減は、ほかでもなく家庭での介護をいよいよ増大せしめることになる。安倍政権と自民党は「選挙公約」で謳う「介護基盤五〇万人増」などとはおよそ真逆のことをやっているのである。
 「選挙公約」でいう介護労働者の「給与月額一万円増」もまったくの欺瞞だ。介護報酬の削減はとりもなおさず介護労働者の賃金切り下げや現水準の固定化をもたらす以外のなにものでもない。これで他産業の平均賃金よりも一〇万円も低く介護労働者の賃金が超低額に抑えこまれている現実をなんら打開することができないのは明白だ。そのうえに「要介護三」以上の重度の利用者が集中するようになった施設での労働者の介護労働は非常に強化されている。だが賃金は低額のままなのである。

安倍・黒田の「異次元緩和」策の凄絶な破産

 安倍政権・自民党が看板政策としてきたアベノミクスの「三本の矢」はことごとく破綻をあらわにしている。
 アベノミクスの基軸をなす「第一の矢」=「異次元の金融緩和」政策からして、今日の世界的な株安のうねりをうけた株価の急落と円高の昂進によって、大破綻をつきつけられている。
 ――日銀が民間銀行から年八〇兆円の国債を買いとり緩和マネーを市中に流して株高と円安を誘導すれば、企業の設備投資と輸出が増大し、賃金も上昇して家計の消費も刺激され高まっていく。企業の利益増大のおこぼれがやがて人民にも滴り落ちてくる。――安倍・黒田がふりまいてきたトリクルダウン§_がまったくのデマゴギーでしかないことは、今日だれの目にも明らかとなっている。
 三年間の「異次元緩和」策実施=緩和マネーの流しこみによって、金融資産を保有する資本家・富裕層はいっそう肥え太った。けれども、日銀が民間銀行に流しつづけてきた緩和マネーは企業への貸し出し=生産的投資にはまわりはしなかった。日本の基幹的な製造業諸独占体は<経済のグローバル化>のもとにあって多国籍企業化し生産拠点を海外に移転してきた。それとともに、少子高齢化≠ナ経済成長がみこめない日本国内においては、設備投資をネグレクトし製造拠点の統廃合・リストラをおしすすめ、労働者には過酷な首切り・賃金切り下げを次々と強制してきた。とりわけ正規雇用労働者の非正規雇用労働者への置き換えが進められ、労働者にはますます貧窮が強制された。国内生産基盤の空洞化を促進してきたことのゆえに、諸独占体は、円安のもとでも輸出をたいして拡大することはできなかった。多国籍企業化した大企業・独占体は、海外の事業収益を中心としてドル高・円安下で為替差益でボロ儲けしたのである(大企業の内部留保は一六年三月末で三六六兆円にのぼっている)。
 だが、その反面で労働者・人民は、企業のリストラ・賃金切り下げ、消費税増税と円安による輸入品価格の上昇、さらには社会保障手当・給付の削減に直撃されてよりいっそうの生活苦を強要されてきた。いまや資本家と労働者との階級間の所得格差は極限的に広がっているのだ。
 参議院選を目前にして安倍はトリクルダウン§_の破綻をおし隠すために、厚顔無恥もはなはだしいインチキを吹聴している。いわく、「三年連続で賃金を上げた」「就業者数を一一〇万人増加させた」「税収を二一兆円増やした」と。冗談ではない。安倍は姑息にもごく一部の大企業の春闘回答の賃上げをとりあげて、「賃金が上っている」と言うが、労働者の実質賃金は五年連続減、年収二〇〇万円以下のワーキングプアが安倍政権下で増えつづけ一一〇〇万人を超えているではないか。非正規雇用労働者が一六七万人も増え、正規雇用は三六万人も減っているではないか。
 税収二一兆円増というのは、東日本大震災の後で税収が最も落ちこんだ一二年度と比較しての数値だ。しかも二一兆円のうち人民からしぼりとった消費税分が九兆円を占めており、これを差し引きリーマンショック前の〇七年と比較するならば所得税と法人税の減は五兆円。安倍政権が独占資本と富裕層を優遇していることの一端がここにも明らかになるのだ。安倍の選挙宣伝は、一事が万事、このようなインチキのオンパレードなのだ。
 アベノミクスの「第二の矢」=「財政出動」では、政府は一六年度予算に盛りこんだ一二・一兆円の公共事業計画を前倒しして九月末までに八割を執行すると発表した。自民党は参議院選公約に「国土強靭化の推進」なるものをあらためて盛りこんだ。こうした公共事業策はいっこうに上向かない景気を刺激することを掲げたバラまき″であり、じっさいには、一部のゼネコン独占体を潤すだけのものなのだ。
 東日本大震災の被災地東北三県の復旧事業なるものは、ゼネコン・独占資本が速やかに利益が出せる高速道路や防潮堤などのコンクリート工事≠ホかりを優先するものでしかないではないか。独占資本の利益につながらないとみなした被災地の再建復旧事業を二の次・三の次にし、被災人民の救済をそっちのけにした代物なのだ。しかも、一七万四〇〇〇人の避難者の大半を占める福島県の原発被災者は、遅々として進まない廃炉作業・「除染」作業のゆえに、苦難を強いられつづけている。
 熊本大地震で多くの人民が被災したにもかかわらず、安倍政権は、被災人民の救済をないがしろにし、仮設住宅の建設さえ遅延させている。なによりも、このネオ・ファシスト政権は、地震による原発事故の危険を訴え運転停止を要求する住民を足蹴にし、川内原発の運転を居丈高に続行しているのだ。
 アベノミクスの「第三の矢」=「成長戦略」にかんしては、「IoT、人工知能の研究開発」といった「イノベーション策」がかけ声だおれに終っている反面で、安倍政権は、「岩盤規制」の破壊、とりわけ労働諸法制の改悪については、参院選後にも一気に強行することを狙っている。「成長戦略」と重なりあうものとして、いま自民党は「働き方改革」の一環として「参院選公約」の「雇用」の項目で「同一労働同一賃金の実施」を掲げている。アベノミクスの結果として格差が拡大した≠ニいう社会的批判の高まりに焦りをつのらせて、安倍は「正規・非正規の格差を是正する」などと歯の浮くような言辞を並べている。参院選にむけて、あたかも働く者の味方≠ナあるかのようにおしだすために、安倍は「連合」労働貴族などが掲げてきた「同一(価値)労働同一賃金」のスローガンを横どりするかたちでこれを前面におしたてている。これまた労働者を愚弄し欺瞞するものだ。
 安倍政権のいう「同一労働同一賃金」なるものは、独占資本家どもが正規労働者の賃金支払い形態を職務給型のそれに改変し、正規労働者の賃金水準を切り下げ、ほんのわずかに上げた非正規労働者の賃金水準に限りなく近づける、こうすることによって賃金総額を切り下げることを狙ったものにほかならない。
 それだけではない。安倍政権は労働時間規制の撤廃、残業代ゼロをもりこんだ労働基準法の改悪、解雇自由化を狙った「解雇の金銭解決」制度の導入などの労働諸法制の大改悪を策している。これらの労働者階級が歴史的にたたかいとってきた諸権利を根こそぎ奪いとり、それをつうじて労働者階級の団結形態たる労働組合とその運動をぶち壊すことを狙ったファシズム的攻撃を断じて許してはならない。

 日銀のマイナス金利政策の破綻

参院選集票運動に埋没する日共中央を弾劾しアベノミクスを粉砕せよ

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労働者人民をあざむく「一億総活躍プラン」

アベ式「同一労働同一賃金」論の正体

 改憲にむけ労働者を欺瞞するための術策

 アベノミクスの大破綻をおしかくすために安倍政権がうちだした「一億総活躍社会」なるシンボル。――それは、人口減少下の少子高齢社会という「国家的危機」のもとで、女性や高齢者を労働市場に引っぱりだし、「GDP六〇〇兆円」という目標に向けてこき使うとともに、死ぬまで「自助努力」を強制すること――つまりは一億総動員・総自助努力強制=I――の宣言にほかならない。
 「一億総活躍社会」なるもののこのような本質をおしかくすために、デマゴーグ安倍は、あたかもそれが労働者・人民の生活を改善するものででもあるかのような粉飾をほどこすことにこれ努めている。その最たるものが、「同一労働同一賃金の実現」なるスローガンである。五月に発表された「ニッポン一億総活躍社会プラン」で言う。――「同一労働同一賃金の実現に向けて、わが国の雇用慣行には十分に留意しつつ、躊躇(ちゅうちょ)なく法改正の準備を進める。」「正規労働者と非正規労働者の賃金差について、欧州諸国に遜色のない水準を目指す」、と。
 このかん「世界で一番企業が活躍しやすい国をつくる」と宣言しつつ、「雇用の柔軟化」と称して労働諸規制を緩和し、正社員の首切りと非正規雇用労働者へのその置き換えを促進してきたのが、安倍政権にほかならない。いや昨年末には労働者派遣法を改悪して生涯派遣≠解禁し、派遣労働者のさらなる拡大への途を掃ききよめた。そしていまも、「解雇の自由化」を熱望する独占資本家どもの要求に応えながら、「解雇の金銭解決制度新設」のための法案策定を着々と進めているのが、この政権なのだ。
 このような安倍政権が、とつぜん「連合」などの諸労組が唱えてきた「同一労働同一賃金」などの言葉を横取り≠オ、みずからの政策として宣伝しはじめたのは、もちろん、大目標≠スる改憲に着手できる議席を獲得するために、参議院選挙に向けて労働者・人民をたぶらかすという政治的思惑にもとづくもの以外のなにものでもない。それは、大企業と富裕層だけに巨大な利益をもたらし、労働者・人民には貧困と格差の拡大だけをもたらしたアベノミクス、これにたいする労働者・人民の怒りをかわすための新たな詐欺宣伝にほかならない。そしてまた彼らは、民進党の共産党との選挙協力をめぐって亀裂が走っている「連合」にクサビをうちこみ、その最右派を自民党支持≠ノ刈りとろうとして、このようなキャッチフレーズをうちだしてもいるのだ。〔「一億総活躍国民会議」の「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」のヒアリングには、労組としては唯一UAゼンセン代表が招かれ、「同一価値労働同一賃金の実現」を要請した。このことは、安倍政権による「連合」分断策の一つのあらわれにほかならない。〕
 安倍政権の政治的魂胆は見え透いているとはいえ、彼らが今日になって、このようなことを猫なで声で言わなければならなくなったのは、アベノミクスの帰結として凄絶な所得格差が明白となっているからなのだ。けれども彼らは、富裕層=ブルジョアどもと労働者・人民とのすさまじい所得および資産の格差には決して触れようともしないし、それを「是正する」などとは口が裂けても言わない。欺瞞的にも、そのような「格差」(=階級間格差)にはいっさい触れることなく、労働者間の・しかも同一企業内の正規と非正規労働者との賃金格差だけに限定して、それを「是正する」とおしだしてみせているだ。安倍政権の「格差是正」宣伝の欺瞞性は、すでにこの一事をもって明白である。
 しかも、「正規労働者と非正規労働者との賃金格差を是正する」と称してもちだされた「同一労働同一賃金実現」という政策≠サれじたいが、独占資本家階級の政治委員会≠ニしての腹黒い階級的意図に貫かれたものにほかならない。

 賃金支払い形態改悪と一体の「格差是正」策

 「世界で一番企業が活躍しやすい国をつくる」と宣言し、この公約を実行してきた安倍政権が、大企業と資本家どもが受け入れがたい「賃金原則」を、たとえ選挙向けであってもうちだすはずはない。彼らが「同一労働同一賃金」の標語をおしたててやろうとしていることは、じつは資本家どもにとって有益≠ネ賃金支払い形態への改変を促すことにこそある。
 安倍の本心≠、御用学者はあけすけに語っている。――
 「今後の低成長、少子高齢化社会の下では、〔年功賃金を柱とする〕正社員モデルの維持は『空想的』です。……今後は年功賃金を職務給に変え、年齢ではなく、仕事を基準に賃金を支払う、同一労働同一賃金型雇用の方向に向かうべきです。正社員と非正社員の賃金格差は、年功賃金のままではなく、両方が歩み寄ることで初めて是正できます。」(八代尚宏、『朝日新聞』五月二十九日付)
 ここで八代は、「同一労働同一賃金」とは、正社員の年功賃金を廃止して、その賃金支払い形態を「職務給」に転換し、職務給を正社員・非正社員に共通の賃金支払い形態として採用することによってしか実現不可能である、と言いきっている。このことをよりあけすけに言うならば、竹中平蔵のように、「同一労働同一賃金と言うなら、正社員をなくしましょう」ということなのだ。
 正社員の賃金を「年功賃金から職務給に変え」るとは、どういうことか。ここで八代が言う「年功賃金」とは、年齢給・勤続給などだけでなく、八〇年代以降の日本の企業で支配的となった職能給をもさす。これまでの職能給は、「職能(=職務遂行能力)が勤続・経験とともに高まる」という想定にもとづいて職能資格等級が組まれ、これに賃金表が対応させられてきたがゆえに、賃金額は年齢に対応して右肩上がりのカーブを描くことになる。これを、「中高年層の労働者には高すぎる賃金が支払われている」とみなし、そのうえで、同一の職務をおこなっているかぎり何年勤続しようとも賃金額が上がらない賃金支払い形態に変えることが必要であり、そのためには職務給(型賃金)を導入するべきだ、というのが、彼らの主張なのである。
 「正社員と非正社員との賃金格差の解消」と称して、正社員の賃金支払い形態の改悪をつうじて中高年層の賃金水準を大幅に切り下げ、それと引き替えに非正社員の賃金水準を一定程度引き上げること――このようにするかぎり、一企業の賃金原資総額は減りこそすれ決して増加しない。――これが、八代ら御用学者の言う「同一労働同一賃金」なのである。「正社員と非正社員の賃金格差」を「両方が歩み寄ることで……是正」するとは、まさにこのようなことにほかならない。
 いま経団連をはじめとする独占資本家どもは、旧来の年功給およびその名残りとしての職能給制度を排して、正社員の賃金制度を「仕事・役割・貢献度賃金」と称する職務給(や役割給)中心の賃金制度に転換すべきことを提唱し、それを実行している。正社員労働者にさらなる生産性向上を強制すると同時に総額賃金を徹底的に縮減するために、である。こうした諸独占体の賃金制度改革の流れをみてとり、それを日本企業の競争力強化のための必須の改革であると評価したうえで、こうした改革を側面援助≠キるために、いま「同一労働同一賃金」なるものをもちだしはじめたのが、安倍政権なのだ。

 独占資本家による「同一労働同一賃金」の恣意的解釈

 対応不能に陥った「連合」指導部と日共中央

 「連合」指導部は、安倍がとつぜん「同一労働同一賃金実現のための法改正」を言いだしたことに動揺し、対応不能に陥っている。――「『法改正』の内容はつまびらかではないが、非正規雇用労働者の処遇改善に向けた法整備は正社員転換の促進などとともに、重要な施策である。」「つい数ヵ月前の労働者派遣法改正法案の国会審議において、野党対案として提出された『同一労働同一賃金推進法案』を骨抜きにした政権が、唐突に同一労働同一賃金を取り上げている。参議院選挙を控えた『イメージ戦略』に終わることがないよう、実効性のある法規制を実現しなければならない」、と(二月二十三日、事務局長談話)。なんとも惨めきわまりないではないか。
 ここには、自分たちが掲げてきた「同一(価値)労働同一賃金」という宣伝文句を横取りされたことへの悔しさと困惑が表明されているだけである。だがそもそも、安倍政権にお株を奪われる≠ネどと慌てざるをえないのは、「連合」労働貴族じしんが、「同一価値労働同一賃金」などという言葉をただただ「イメージ戦略」としてのみ弄んできたからなのだ。正規雇用労働者と非正規雇用労働者とのあいだの、また大企業労働者と中小企業労働者とのあいだの賃金格差の拡大に何ら反対することもせず、いやむしろそれに手を貸してきたのが彼ら労働貴族である。そのような彼らが、言葉のうえでだけ空疎な「同一価値労働同一賃金」なるものを唱えてきたにすぎないからこそ、狡猾きわまりない安倍にお株を奪われた≠フである。じっさい、いまやUAゼンセン労働貴族などは、ほとんど安倍政権にからめとられているではないか。
 日本共産党と「全労連」指導部にしても同断である。彼らは、安倍政権が「同一労働同一賃金実現のための法改正」を言いだしたことに、「当然であり、遅きに失した」(『しんぶん赤旗』三月七日付)などと応じた。ただわずかに、「運用次第では賃金の低位平準化をもたらすことに注意する必要がある」などと寝ぼけたことをほざきながら、「真に実効性ある法改正」という尻押しをせざるをえなくなっているのだ(本紙第二四二二号、六面トピックス欄参照)。
 すべての既成指導部は、安倍の「同一労働同一賃金」という言葉に幻惑されて、この欺瞞的政策≠フ階級的意図とその本質を暴きだすことができないのだ。それは、彼らが叫んできた「同一労働」なるのものじたいの没社会科学性のゆえであり、根本的には「賃金=労働の対価」というブルジョア的俗説の平面で「公正な賃金」なるものを夢想してきたにすぎないからなのである。

 「同一労働同一賃金原則」の錯誤

 そもそも、「同一労働同一賃金」論とは、男女差や年齢・人種・宗教などの区別をすることなく、労働市場にあらわれた「商品としての労働力」が為すであろう同一種類(職種または職務)の労働には同じ賃金を支払うとする考えである。この考えは、職種別または職能別労働組合が主力を成してきたヨーロッパにおいて最初に定着化し、戦後日本においても、総評(日共系組合を含む)などを中心にして労働組合が掲げる「賃金原則」として導入されてきた。
 しかしこの考えは、労働力が資本のもとにある生産過程において発現した結果の側から、支払われた賃金を「労働の対価」または「労働の価値=価格」とする俗説を前提とし根拠としている。そしてまた、この「同一労働」とは何か、ということがなんら技術学的に明らかにされてはいない。「労働の量と質」、「労働(および労働力)の異種性と異質性」などについての考察がまったく欠如したまま、「同一労働」なるものが語られてきたにすぎないのである。まさにこのような没理論のゆえに、既成指導部は、安倍政権の「同一労働同一賃金」宣伝に翻弄され、その反労働者性を暴露することができないのである。〔既成労組指導部が掲げてきた「同一労働同一賃金」論については、黒田寛一著『賃金論入門』一四二〜一四四頁、六〇頁などを参照せよ。〕
 われわれは、アベ式の「同一労働同一賃金」論なるものが、――それが選挙向けの詐欺宣伝であるということを暴露するだけでなく――その内容からすれば、「賃金格差是正」を名分にして独占資本家階級による職務給型の賃金制度の導入とそれをつうじての正規労働者の賃金水準の切り下げを促進するための狡猾な術策であること、このことをすべての労働者のまえに暴きだし、警鐘を乱打するのでなければならない。

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「安心」とは名ばかりの「保育・介護の整備」策

 安倍政権は、消費税増税の先送りと衆参同日選の見送りを発表した翌日の六月二日、「一億総活躍プラン」(以下「活躍プラン」)を含む五つの政策文書を閣議決定した。来たる参議院選挙の争点は「アベノミクスの加速か後戻りか」であり、その経済政策の一環として「保育所、介護施設の整備など一億総活躍社会を見据えた投資をすすめる」とのたまった首相・安倍(一日の記者会見)。アベノミクスが完全に破綻したことをおし隠すために、「夢をはぐくむ……」だの「安心につながる……」だのと聞こえの良い言葉で粉飾をこらして、社会保障政策に力を入れるかのように装っている。だがしかし、それはまったくのお為ごかしにほかならない。「保育園落ちた、日本死ね」のブログをきっかけに、女性や高齢者層からの支持が少ないことをみてとった安倍政権は、自民党ならびに公明党、おおさか維新の会など改憲勢力で参院議席の三分の二を確保するためにこそ、社会保障を充実させるかのような装いをこらして、票集めに狂奔しているのだ。

(以下、見出し)

一億総搾り取り≠フための環境整備

「保育士・介護士の処遇改善」のウソ

「生産性向上」の強制

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「新たな利益成長軌道」を呼号するNTT経営陣

 労働者への犠牲強要を許すな

 昨二〇一五年五月にNTT経営陣は、新中期経営戦略「新たなステージをめざして2・0」(以下「2・0」と略記)を発表した。この新経営戦略は、安倍政権・総務省の二〇一四年における情報通信政策なかんずく「ドミナント規制政策」の転換〔本紙第二三六三号五面参照〕をふまえ、NTT東西会社が昨春から「光コラボ」と称する「B2B2X(ビートゥビートゥエックス)」ビジネスモデルを主軸とする事業構造へと大転換させたことをふまえて、次の三年間にNTTグループとして採るべき経営施策を具体化したものにほかならない。経営陣は、この新たなビジネスモデルを主軸にして企業利益を最大化するために、もはや固定電話業務そのものをそこに働く労働者もろともにどしどし縮小する方向へと突進しはじめたのだ。NTT労働者は、この一大リストラ攻撃を断じて許すな!

(1) 新中期経営戦略「新たなステージ2・0」なるもの

(2) 「利益成長」の内実は海外クラウドと一大リストラ

(3) 固定電話網の切り捨てを画策

(つづく)

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6・5京丹後 「米軍Xバンドレーダー基地を撤去せよ」
闘う学生先頭に現地闘争
近畿各府県から五〇〇名が決起
 六月五日、京都府京丹後市の北端にある丹後町において、近畿各府県から五〇〇名の労働者・学生・市民が結集し、「米軍Xバンドレーダー基地撤去! 京丹後市は住民の自治と安全・安心を守れ! 6・5京丹後現地総決起集会」とデモが開催された(主催は「6・5京丹後集会実行委員会」)。
 神戸大学反戦ネットと奈良女子大学学生自治会のたたかう学生たちは、米日両権力者による核軍事同盟の強化と中国の対米対抗的な核軍事力増強を許さない烈々たる決意に燃えて、この日の闘いに勇躍決起した。職場での闘いを基礎に結集した労働者と相固く連帯して、<日米グローバル戦争同盟の構築・強化反対><米―中・露の核軍事力増強競争反対>の革命的な方向性を鮮明にしてたたかいぬいたのだ。 
レーダー基地のゲート前で怒りのシュプレヒコールを叩きつける
(6月5日、京丹後市)
闘う学生が労働者・市民と固く連帯し丹後町現地を戦闘的にデモ
(6・5)
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