第2647号2020年11月30日)の内容

<1面>
菅政権による労働者・人民への犠牲強制を打ち砕け
習近平ネオ・スターリニスト政権の香港人民弾圧弾劾!
<3面>
分断深めるヤンキー帝国主義 米大統領選の意味
<2面>
日米安保の鎖 18
 空自那覇基地―強化される対中国軍機スクランブル
 空自岐阜基地―電子戦兵器開発拠点の構築
<4面>
「国難突破の政労使協議」へ解消
「連合」の21春闘「基本構想」 
Topics 「2%程度の賃上げ」要求の欺瞞
IT化による生産性向上を煽るJAM指導部
<5面>
「デジタル革新」を賛美する電機労働貴族
<6面>
万華鏡2020――情勢の断層を読む
◎<ドル体制>への挑戦
◎「伝家の宝刀」
◎「バイリンガル教育」?!
◎柏崎刈羽原発「保安規定」
週間日誌〈世界の動き・日本の動き〉
 「解放」最新号





























  


菅政権による労働者・人民への犠牲強制を打ち砕け


 新型コロナウイルス感染が急拡大し、日本国内の一日の新規感染者数が二五〇〇人超、東京都は三日連続で五〇〇人を超えた(十一月二十一日現在)。このもとで、新型コロナ・パンデミックによる経営悪化を理由にして、資本家どもが労働者への解雇・雇い止めの攻撃を容赦なくふりおろしている。中小企業の廃業・倒産もまた激増している。酷寒の年末をひかえ、失業し路頭に迷う労働者が急増しているのだ。
 だが「自助」を叫ぶ菅を首相とする政府は、職を奪われ収入を断たれた労働者・人民への救済策も生活補償のための諸施策もなんらうちだしていない。
 二〇兆円を超える第三次補正予算案の編成において菅が力を入れたのは、「GoToトラベル」事業延長にかかる経費や官民の「デジタル化」促進費用の確保である。それらは「経済の回復」を最優先に掲げる菅政権が独占資本・大企業を支援するための諸施策だ。新型コロナの全国的感染拡大を受け「GoTo」事業の一部停止を余儀なくされてもなお菅は「感染対策と経済立て直しを両立させる」と言い張り、みずから旗を振ってきた観光需要喚起・景気振興策の継続にあくまで固執しているのだ。
 大企業支援に傾注するこの政権は、労働者・人民の救済・生活補償など端から放棄している。コロナ感染の拡大のもとで職と収入を奪われ貧窮にあえぐ数多の労働者・人民にむかって「自助」をがなりたてるのは、国家に頼らず野垂れ死ね≠ニ宣告する棄民政策そのものだ。労働者・人民をさらなる貧窮地獄に叩きこむ菅ネオ・ファシスト政権を許すな!

感染拡大下で解雇・雇い止めに狂奔する独占資本家

 パンデミック恐慌による売り上げ大幅減少・業績不振をのりきるために資本家どもはおびただしい数の労働者を解雇・雇い止めにし路頭に放りだしている。総務省・厚生労働省の統計でさえ、二月から十一月はじめまでの累計で解雇・雇い止めにされた労働者は七万人を突破した。そのうち約半数が非正規雇用労働者だ。九月の完全失業者数は二一〇万人で八ヵ月連続で増加している。非正規雇用労働者の数は前年同月比で一三〇万人減少した。これらの数字じたいが氷山の一角にすぎない。
 「緊急事態宣言」が発令されたこの春いこうすでに膨大な数の非正規雇用労働者の首を切った独占資本家どもは、この秋冬に正規雇用労働者にたいする大量解雇攻撃をしかけている。「早期退職」「希望退職」の募集という実質上の解雇攻撃にうってでている上場企業は公表しているだけで七十社を超える。昨年の二倍以上だ(十一月五日現在)。製造業の日立金属などが一〇〇〇人以上、旅行業界最大手JTBは六五〇〇人の削減を目論んでいる。資本家どもは、労働者にたいして、早期・希望退職のほかに他業種・異業種への出向や遠隔地配転を強制し、それに応じられない場合は自己都合退職に追いこむなど、悪辣な手法を駆使して労働者の大量解雇に狂奔している。
 また資本家どもは、人員削減のために新卒採用の中止や採用内定の取り消しを強行している。二〇二〇年春卒業の大学生・高校生への内定取り消し件数は、前年の約六倍におよんでいる。
 この新型コロナ蔓延下で、資本家どもは、企業生き残りのためにすべての犠牲を労働者・人民に転嫁している。資本家から解雇を強制され減収・無収入に突き落とされた労働者は、極限的な生活苦に叩きこまれているのだ。
 「収入がなくなり何日もなにも食べていない」「寮を追いだされ路上で生きるしかなくなった」……労働相談や支援団体に寄せられる労働者の悲痛な声が後を絶たない。自殺者も増えている。十月の全国の自殺者は二〇〇〇人を超え、昨年比で四〇%増加した。七月いこう三ヵ月連続で一八〇〇人を超え前年を大幅に上回っている。労働者・人民はいま絶望の淵に追いつめられている。
 企業生き残りに狂奔する資本家どもが一切の犠牲を労働者に集中的に強制し、労働者は過酷きわまる状況に突き落とされている。絶対に許せないではないか。

大企業支援を強化する政府

 いま日本の独占資本家どもは、「コロナ禍を第四次産業革命での立ち後れを挽回するチャンスに転じよ」と叫びたてている。米欧や中国の巨大企業との競争にかちぬくために、生産過程・流通機構などへのAI機器の導入により「生産性向上」を図るとともに、AIなどの先端デジタル技術を活用した新商品および新事業の開発・創出に血道をあげているのだ。
 この独占資本家どもを支援するために、菅政権は第三次補正予算の柱として「経済のデジタル化」推進策に大規模な予算を組んでいる。「ポストコロナに向けた経済構造」と称してデジタル分野の整備を促進する諸施策を推進しようとしているのだ。
 また菅政権は、コロナ感染の拡大によって業績悪化に陥り大規模な出向計画を公表しているANAや三菱重工などの独占企業の支援に注力している。大企業が他企業に労働者を出向させる際に活用する「雇用調整助成金」の助成を手厚くする財源をも、政府は補正予算案に盛りこんでいる。「人材の流動化」と称して労働者削減と人件費抑制をたくらむ独占資本家を支え、労働者の出向をより拡大することを政府が推奨しているのだ。〔菅は衆議院解散・総選挙にうってでることをも計算して、資本家階級支援を強化する予算案をおし通そうとしているのだ。〕
 この新型コロナ感染拡大のもとでも、特定の自動車独占体や電機独占体の諸企業は空前の収益をあげている。大企業(資本金一〇億円以上)の内部留保は前年度比二・六%増加の四五九兆円にのぼり、十二年連続で過去最高を更新している。独占資本家どもは賃下げや解雇を労働者に強要し莫大な利益を得ているのだ。まさに資本は労働者の生き血を吸って肥え太っている。独占資本家どもの要請に応え彼らの利害を貫徹するために大企業優遇の諸政策を実現する、こうしたブルジョア階級性をむきだしにして彼らを支援しているのが、菅政権にほかならない。

人民を貧窮に叩きこむネオ・ファシスト政権を許すな

 うちつづくパンデミック恐慌のもとで中小企業の倒産(負債一〇〇〇万円以上)が激増している。十月は一〇五件に達し、二月からの累計が七〇〇件を突破した(十一月十三日)。前年同月より減収した企業が八割にのぼり、事業の廃業を検討するという企業が一割を超えている。この年末にかけて中小企業約三一万社が廃業する可能性がある。
 中小企業の廃業・倒産が増えれば、そこで働く膨大な労働者が失業に追いこまれる。だが菅政権は、中小企業救済の手立てを講じることもなく、それどころか現在、数かずの支援策のうちきりにうってでている。
 新型コロナの影響によって業績が悪化した中小企業向けの「持続化給付金」制度、十月までに約三五〇万件の中小企業に給付してきたその申請受け付けを政府は来年一月十五日に終了する。
 「雇用調整助成金」制度の中小企業向け特例措置――休業にともない労働者の賃金を一〇〇%・日額一万五〇〇〇円まで政府が助成する――の期限を十二月末までとし来年一月から段階的に縮小することを決定している。
 生活困窮者および売り上げが半減した個人事業主・中小企業に家賃を補助する「住居確保給付金」制度は、四月〜八月の申請が一〇万件を超えた。支給期間が最長九ヵ月なので、来月いこうの厳冬期に住居・事業所を追いだされる事態が続出するにちがいない。
 中小・零細企業が廃業・倒産の危機にあえいでいる今日このときに、中小企業の選別・淘汰を積極的に指南しているのが、菅のブレーンの極悪分子どもだ。「日本の生産性が低い原因の中小企業は潰せ」と喚くアトキンソン、「淘汰されるべき企業を残しておくと日本経済の弱体化につながる」と言い放つ竹中平蔵。こうした輩を「成長戦略会議」のメンバーに重用し、彼らの提言をとりいれ、中小企業淘汰をみずからの政策としてどしどしとおしすすめているのが首相・菅だ。
 この男は、「自助」なるものをふりかざし、中小企業への支援を次々とうちきり、窮乏に苦しむ労働者・人民への救済措置や生活補償を一切拒んでいる。この政権がおしすすめる諸政策に貫かれているのは、まさに「弱肉強食・優勝劣敗」の社会ダーウィニズムであり、ファシズム的優生思想そのものだ。独占ブルジョアどもの階級的利害をあくまで貫徹し、労働者・人民を見殺しにしているのが、冷酷無比な菅ネオ・ファシスト政権にほかならない。
 この首相・菅にたいして「生産性向上で政労使が力を合わせる」とほざいているのが「連合」会長・神津だ。政府や独占資本家どもが実施している生産性向上・国際競争力回復のための諸施策に全面的協力を誓約しているのだ。コロナ・パンデミックのもとで労働者の賃金カット・大量解雇の攻撃に加担する「連合」指導部の大裏切りを弾劾せよ!
 <パンデミック恐慌>下で独占資本家どもがふりおろす大量解雇・賃下げ攻撃を打ち砕け! 労働者への犠牲強要を許すな!
 菅政権による貧窮人民切り捨てを許すな! 社会保障の大削減反対! 消費税増税・大衆収奪の強化を打ち砕け!
 憲法改悪阻止! ネオ・ファシズム支配体制の一挙的強化を許すな! 日米新軍事同盟の強化反対!
 労働者・人民に戦争と貧困を強制する菅政権の総攻撃を打ち砕くために階級的団結をうち固めたたかおう!

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習近平ネオ・スターリニスト政権の香港人民弾圧弾劾!


「愛国精神」扇動に狂奔

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分断深めるヤンキー帝国主義

米大統領選の意味

T 刑事訴追回避を策してあがくトランプ

 アメリカ大統領選挙は、民主党候補バイデンが過半数の二七〇人を上回る三〇六人の選挙人を獲得し勝利を手に入れた。
 このバイデン勝利≠ェ確定して十日以上経てもなお、トランプは、「敗北宣言」も政権移行のための引き継ぎも拒否しつづけてきた。もしも、やすやすとホワイトハウスを追われるならば、脱税容疑やロシア・ゲートなどを税務・司法当局に訴追されるかもしれない、大統領としての業績が汚される=\―このことへの恐怖がトランプの頭を占めているのだからである。
 大統領在職中のトランプは、二〇一六年、一七年の所得税をそれぞれ七五〇j(八万円弱)しか納めてこなかっただけでなく、前回当選前の十五年間のうち十年間にわたって所得税を一セントたりとも納めてこなかったことが暴露されている。歴代大統領の慣例である納税申告書の開示さえも拒否しつづけてきた。しかも、一六年の大統領選挙のさなかに、トランプの側近(元顧問弁護士コーエンや元大統領補佐官フリン)が駐米ロシア大使館員と接触し資金を提供したり、民主党候補ヒラリーのメールサーバーに「不正アクセス」=ハッキングをおこなったりした容疑で特別検察官の捜査対象となった。このロシア・ゲートをめぐってトランプは大統領免責特権のゆえにいったんは不起訴とされたものの、当時、特別検察官を務めたモラーは「大統領の犯罪は大統領でなければ起訴に値する」と断言してきた。
 これらの事件を、バイデン新政権下の司法当局が立件し刑事訴追することを、なんとしても阻止しようとしているのがトランプである。そのためにこの男は、「投開票で不正があった」と強弁し各州で訴訟を乱発したり(しかし次々に敗訴)、さらには数千人規模の「トランプ支持」集会を各地で開催し騒乱≠フ脅しをしかけたりしているのだ。それは、みずからを大衆に支持された大統領≠ニしておしだすためでもある。
 それだけではない。トランプは、政府予算や政権人事の承認権限を握る上院において、もしも共和党が多数を握れば、バイデン新政権を出発点からレイムダックに追いこむことができるかもしれない、という計算を働かせている。現在のところ上院は、民主党四十八議席にたいして共和党が五十議席を獲得しているのであるが、来年一月はじめの決選投票にもちこまれたジョージア州の二議席の行方次第では再び共和党が過半数を制することになる。
 このジョージアで残り二議席のうち一議席以上をなんとしても獲得し、バイデンから恩赦をひきだす腹づもりなのがトランプである。このゆえにトランプは、たとえ妻メラニアや娘イバンカおよび娘婿クシュナーから家名を汚すな≠ニ諫められようとも、各州の選挙人の公式投票(十二月十四日)および大統領当選者の正式確定(来年一月六日)が迫るなかで、ぎりぎりまでバイデンの政権移行準備を阻むという策を弄しているのだ。

U 露呈した階級・階層・人種・地域間の亀裂

 今回の選挙戦は全米各地で、「新南北戦争」と形容されるほどの共和・民主両陣営の激烈な攻防がくりひろげられた。自動小銃を携帯した「ミリシア」と呼ばれる自警団を動員してバイデン支持者を威嚇するトランプ陣営と、これに対抗して銃武装部隊を各拠点に配置したバイデン陣営。この両陣営が相互に集会場や投票所周辺で銃口を向けあい対峙しあうという異様な光景が全国各地で現出した。全米の銃砲店に購買者が殺到し店頭から銃弾が消えたといわれるほどであった。
 今年後半から数ヵ月間にわたって全米を憎悪と興奮の坩堝にたたきこんだ今回の大統領選挙。その結果は、「バイデン優勢」という事前のマスコミ評に反して、トランプに約五五〇万票の僅差≠ノまで迫られバイデンが辛勝するという決着となった。このことは、まさにアメリカ社会の分断・分岐を鮮明に浮き彫りにしたのである。
 バイデンが多くの支持を集めたのは、シリコンバレーを擁するカリフォルニア州、金融の中心地域ニューヨーク州などであり、これに加えて、鉱工業地帯(東部ペンシルベニアや中西部ミシガン、ウィスコンシンなどの各州)の白人労働者層の少なからぬ部分からも支持を集めた。さらに、伝統的に共和党の牙城であったアリゾナ州においても、「移民排斥」を唱えるトランプに反感をつのらせたヒスパニックなどの支持によってバイデンが選挙人を獲得した。これにたいしてトランプは、南部テキサス州に代表される農業地帯などの旧来の共和党の支持基盤にとどまらず、石炭・石油・天然ガスの産出地帯であり鉄鋼業の中心地であるオハイオやインディアナなど「ラストベルト」「コールベルト」の各州の労働者の一定程度の支持をも再び獲得したのであった。
 約七八六〇万にのぼる人民がバイデンに票を投じた、その最大の理由は、「トランプではないこと」であった。これらの労働者・人民は、「コロナ対策より経済優先、ウイルスはすぐに消える」などとほざいたトランプによってますますみずからの生活と生命の危機が迫っていると感じざるをえなかった。
 現に、今春いらいの新型コロナの感染拡大にたいして、トランプ政権が独占資本家を救済するために「経済の再開」を最優先にし感染対策を放棄したがゆえにアメリカでは世界最大の感染者・死者をうみだした(十一月上旬には累計で一〇〇〇万人を突破、死者約二四万人、一日あたりの新規感染確認者一五万人)。しかも、新型コロナ・パンデミックのもとでヒト・モノの移動がストップすることによって製造業の不況は一段と深刻化しているのであり、資本家たちが相次いで工場閉鎖を強行し何千万人もの失業者をうみだしている。
 今年四月には二〇五〇万人の労働者が資本家どもによって首を切られ、失業率は大恐慌(一九二九年)以来最悪の一四・七%に達した。四年前の大統領選においてトランプが「雇用回復」を掲げて「勝利」をもぎとった「ラストベルト」各州においても、石炭・鉄鋼・自動車などの工場閉鎖・失業が続発している。自動車産業の中心地デトロイトを擁するミシガン州においても、自動車独占体のゼネラル・モーターズ、フォード・モーター、クライスラー(いわゆる「ビッグ・スリー」)が相次いで工場を閉鎖し、下請け企業はレイオフを強行した。
 「何が雇用を取り戻すだ」――こうした怒りをたぎらせた労働者・人民、とりわけ、前回の選挙においてトランプの「岩盤支持層」と呼ばれた非大学卒白人労働者(いわゆる中・低所得者層)のうちの少なからぬ部分が、トランプに幻滅と怒りを募らせ、バイデン支持へと転じたのだ。
 そして、今回の選挙は、――新型コロナ感染拡大下の郵便投票の条件緩和のもとで――郵送を含む期日前投票は投票総数の三分の二にあたる約一億票にのぼった。この約七割を占めるとされるバイデン支持票、その中心は、黒人やヒスパニックの労働者たちであった。彼らの多くが、首を切られ収入を失うだけでなく健康保険から排除されているがゆえに病院にかかることもできない貧困層であり、新型コロナ・パンデミックの犠牲が集中させられた人びとなのだ。
 こうした人民の怒りの発露こそが、相次いで発生した警察官による黒人虐殺への抗議行動にほかならない。だが、これをトランプは「暴徒」と烙印し、「法と秩序」の名において警察部隊によって弾圧にうってでた。しかも、白人至上主義者らを武装襲撃に駆りたてた。――こうした事態を眼前にして、黒人をはじめとする労働者・人民は怒りを沸騰させたのだ。
 他方、投票総数の半数に迫る約七三一〇万人の労働者・人民がトランプに投票したのである。新型コロナ対策、人種問題、気候変動問題を重視した人民の多くがバイデンを支持したのに比して、「雇用改善・経済回復」を切実に求めた少なからぬ人民がトランプに票を投じ、その数は前回選挙を一〇〇〇万票上回ったのであった。
 このことは、アメリカ製造業の国際競争力の喪失、中西部・東部各州に広がる鉱工業地帯・地域社会の荒廃にたいする絶望感に襲われている労働者・人民の怒りのあらわれにほかならない。そのなかでも、アメリカ五大湖沿岸・周辺地域にひろがる鉱工業地帯である「ラストベルト」の白人労働者のなお過半が、トランプを選択したのであった。
 資本家によって首を切られ再就職の道をも絶たれた、これら白人労働者の多くが、「忘れられた人びとに寄り添う」だの「ワーキングクラスの逆襲」だのというトランプの甘言にからめとられている。彼らの多くが、黒人やヒスパニック、さらには中国人によって「雇用が盗まれた」などという被害者意識を煽られ、排外主義や人種主義だけではなく、「アメリカン・ドリームの再興」などという時代錯誤のイデオロギーに冒されてしまっている。
 いわゆる「ブルーカラー」に属する非大学卒の中高年白人労働者の大部分が、「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」なるスローガンを連呼するトランプに、落日のアメリカ≠ゥらの脱出の夢を託したのだ。彼らはベトナム戦争以前の古き良き時代に回帰すべき≠ニいうノスタルジーをかきたてられている。
 新型コロナ・パンデミックのもとで一切の犠牲を労働者に強制している資本家階級にたいして、労働者階級が一致団結してたたかうどころか、真っ二つに分断され互いに反目しあうという、このアメリカ階級闘争の現実こそは、AFL‐CIO(アメリカ労働総同盟・産別会議)などの既成労働運動指導部の腐敗のゆえにもたらされている悲劇いがいのなにものでもない。
 階級協調主義にもとづくこれらの既成労働運動指導部は、資本家の首切り・賃下げ・労働強化などの諸攻撃にたいしてなんらたたかうことなく、民主党候補への投票を上から指令しているにすぎない。AFL‐CIO傘下の産業別労組指導部は、それぞれの産業を防衛する観点から民主党への支持拡大運動に組合運動を解消している。こうした「指導」に多くの下部組合員が愛想をつかし、その一部はアパシー化したり共和党トランプへの支持に傾倒したりしているのだ。

V アメリカ経済危機のバイデン式のりきり策

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「国難突破の政労使協議」への春闘の解消

「連合」指導部の二一春闘「基本構想」

解雇・賃下げに抗議もせず「賃上げ要求」を放棄

菅政権の需要喚起策の積極的下支え


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