第2897号(2025年12月8日)の内容
<3面>
「パリ協定」の死文化を露わにしたCOP30
<4面>
フランスで燃えあがった緊縮財政導入阻止の闘争
ウクライナ増派に突き進む金正恩
<6面>
香港 国安法5年
過酷な人民弾圧を弾劾せよ
ロシアの炭鉱労働者が賃金不払いに抗議しハンスト
<1〜2面>
特集 極右高市政権を撃て! A
人民に窮乏を強いる経済対策
対中戦争遂行のための大軍拡
民族排外主義の煽動
<5面>
大阪・関西万博 運転中止事故
大阪メトロの安全無視運行
Topics 政労使協議で経済を巡航軌道に
―11・25「政労使の意見交換」で芳野
「解放」最新号
| 人民に窮乏を強いる軍事強国化 ・戦争準備の「総合経済対策」
高市政権がうちだしている経済政策は、「危機管理投資」の名において軍民両用の戦略技術・物資関連産業に巨額の国家資金を投じる、その財源として国債を濫発し日銀にそれを購入させるとともに低金利を維持させる(「金融緩和の継続」)、それをつうじて市場の通貨量を増加させ株価を引き上げるとともに円安を促進する。――このような諸政策である。それは、猛烈な物価高に苦しむ労働者・人民にさらなる物価高騰を強制する、まさに独占体支援のための人民窮乏化政策にほかならない。 「危機管理」「安全保障」だらけの経済政策 高市政権は、十一月二十二日に、「強い経済を実現する総合経済対策」と銘打って総額二一・三兆円にのぼる経済政策をうちだした。 @「物価高への対応」(これを「生活の安全保障」と称している)、A「危機管理投資・成長投資による強い経済の実現」、B「防衛力と外交力の強化」の三つの柱から成るとされるこの対策は、軍事を中心とする「安全保障」の強化に巨額の財政資金を注ぎこみ、それを呼び水として経済そのものを活性化させる、というまさしく軍事強国化・戦争準備のための総合経済対策≠ニでも呼ぶべきものにほかならない。 ガソリン暫定税率廃止、子育て応援、コメ券配布支援などの物価対策(@)は、とどまるところのない物価上昇に苦しむ人民の不満を懐柔するための一時しのぎの対策であり、物価高の主要因たる円安そのものには何ら手を付けないものだ。 極右タカ派としての高市の思想≠ェ露骨に貫徹されているのが、「危機管理投資」(A)と「防衛力の強化」(B)である。そもそも「防衛力の強化」を経済対策の一本の柱として組みこむことじたいが、この政権がすべての政策を軍事強国化・戦争準備の観点からうちだしていることを示している。 「危機管理投資」とは、AI・半導体・造船・量子などのいわゆる「戦略技術・物資」にかかわるそれである。戦争や大災害に際して、それを失えば国家の存立を危うくすると彼らが考えているような技術・産業に選択的に投資するということである。こうした技術の開発、物資の確保、アメリカなどと連携してのその供給網の確立を、「日本の経済安全保障」にかかわる必須の課題として位置づけ、それを日本の国運≠懸けた官民一体のプロジェクトとして実現しようとしているのである。また、「防衛力の強化」とは、GDP比二%という対米公約を二年前倒しで果たすための一・一兆円(総額一一兆円)の財政資金の投入を指す。 このような軍民両用物資の産業および軍需産業に莫大な国家資金を投入し、それを呼び水として民間資金をもかき集めて投資拡大(大企業が溜めこんでいる六三八兆円もの内部留保を吐き出させて)を促し、サプライチェーンの上流から下流にいたる産業・企業を活性化する、それをつうじて衰退一途の日本経済の再浮揚をはかる、というのが、軍国主義者・高市の「成長戦略」なのである。先端半導体製造の国策会社ラピダスにたいする一兆円の追加補助金(これまでの額を合わせると総計二・九兆円)などは、その典型である。 このように「積極財政」の名において、戦争に備えて「危機管理」「安全保障」に巨額の国家財政資金を投入すること。――これが高市政権の経済政策の第一の特徴である。 以下、見出し 赤字国債の濫発と日銀への購入強制 「金融緩和継続」・円安促進による人民への犠牲転嫁 |
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| 対中国戦争遂行のための大軍拡に突進 軍事費対GDP比三・五%への跳躍 高市政権は十一月二十八日に、一兆一〇〇〇億円もの防衛費を計上した補正予算案を閣議決定した。これにより今年度の防衛費を一挙に総額一一兆円に増額し、「二〇二七年度までの目標」として掲げてきた防衛費のGDP比二%水準への引き上げを今年度中に強行しようとしているのだ。 高市は、「日米同盟の抑止力・対処力を高める」(十月二十四日の「所信表明演説」)と叫んで、すでに沖縄・南西諸島に次々と配備を強行してきた中射程ミサイルに加え、射程を一〇〇〇`b超に延伸した一二式地対艦誘導弾や一六〇〇`b以上の射程をもつアメリカ製巡航ミサイル「トマホーク」などの中国本土を攻撃しうる長射程ミサイルを、熊本県・陸自健軍駐屯地をはじめ日本全国の基地や海自イージス艦に前倒しで配備することを急いでいる。 しかも高市を首班とする自民・維新の連立政権は、いまやこれらの長射程ミサイルを海中から発射する原子力潜水艦の建造・保有にさえ手を染めようとしている。高市はその野望を、維新と交わした「連立政権合意書」(十月二十日)のなかでむきだしにしている。――「長射程のミサイルを搭載し長距離・長期間の移動や潜航を可能とする次世代の動力〔原子力のことだ!〕を活用したVLS〔垂直発射装置〕搭載潜水艦の保有にかかる政策を推進する」と。 このかつてない異次元≠フ大軍拡をおしすすめるためにこそ、高市政権はトランプ政権による軍事費のGDP比三・五%への引き上げ要求を渡りに船として、防衛費のGDP比二%への引き上げを一気に今年度中に前倒ししようとしているのだ。これはGDP比三・五%への跳躍台だ。 十一月七日の衆院予算委員会において首相・高市が、中国による「台湾―フィリピン間の海峡封鎖」が発生したばあい、「武力の行使をともなうものであれば、どう考えても存立危機事態になりうる」とほざいた答弁は、「台湾有事」にさいして日本国家が「集団的自衛権」を発動し米軍と一体となって対中国戦争を遂行するという、政権としての決意≠傲然と披瀝したものにほかならない。 「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ政権が、米軍がアジア・太平洋において担ってきた軍事的役割を日本国家が主力となって担うことを強く求めている。このトランプの要求に応えて、高市政権は「日米同盟をかつてない高みに引き上げる」と勢いこみ、アメリカとともに対中国戦争を遂行するための一大軍拡に突進しはじめたのだ。 「非核三原則」を反古に米軍「核持ち込み」を公然化 兵器輸出の全面解禁 |
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| トランプの悪罵 習近平の居直り EUの凋落 「パリ協定」の死文化を露わにしたCOP30 今年の夏、北半球は史上空前の灼熱地獄に覆われた。猛烈な熱波に襲われた欧州や北アメリカでは山火事が頻発し、東アジアの各地には台風がくりかえし襲来した。いまこの時も、東南アジア諸国において大洪水が発生している。中東やアフリカでは干ばつによって砂漠化が進行し、島嶼諸国は海面上昇=国土消失が深刻化している。南太平洋のツバルの人民は、日に日に海面下に没する故郷を捨てて、「移民」として扱われることへの不安を抱きながらもオーストラリアへの集団移住を開始した(十月十七日)。 全世界の数多の労働者・人民が、地球の灼熱化が引き起こした異常気象と頻発する災害によって生活と生業の基盤を破壊され、農産物の価格高騰に襲われているのである。 「脱化石燃料」が削除された合意文書 こうしたなかで、地球温暖化の抑制と被害対策とを協議する国連の会議「COP30」(気候変動枠組み条約第三十回締約国会議)が、十一月十日から二十二日まで、ブラジル北部のアマゾン川に面した地方都市ベレンにおいて開催された。この会議は、今世紀末までの気温上昇を産業革命前比で一・五度以内に抑えると謳った「パリ協定」の締結から十年の節目の会議とされた。それゆえ各国政府には、二〇三五年までの温室効果ガス排出削減目標を提出することが義務づけられていた。 だがCOP30において露わになったものは、「パリ協定」の義務履行を放棄した各国権力者の姿であった。温室効果ガス排出世界第二位のアメリカのトランプ政権は「パリ協定」から離脱し、バイデン前政権が掲げていた削減目標(二〇三五年には二〇〇五年比で六一〜六六%削減する)を破棄した。COP30もボイコットした。排出量世界第一位の中国は、二〇三〇年まで温室効果ガスの排出量を増加させたうえでその後わずかに削減するという、削減目標ならぬ増加維持目標≠提出した。これは途上国の権利≠利用した習近平政権の居直りにほかならない。 これまで地球温暖化防止のリーダーを自任し、従来のCOPではどの国よりも早く温室効果ガス排出量削減目標を提出してきたEUが、COP開幕直前の十一月五日にギリギリに提出することになった。それはEU内部の対立のゆえであり、主要国ドイツの環境政策の軌道修正のゆえであった。 そしてインドをはじめとする四割の諸国が、そもそも目標を提出しなかった。それゆえ国連専門委員会の科学者はみな「今世紀末までに二・五〜三度の気温上昇は避けられない」と語っているほどだ。「パリ協定」締結から十年のCOP30は、「パリ協定」が死文化していることを露わにしたのである。 COP30の最大の争点となり会期延長の原因となった問題は、議長国が提案した合意文書案から「脱化石燃料」という文言が削除されたことだった。いったん議長国ブラジルのルラ政権が「化石燃料からの脱却を加速する」という文章を原案に書きこんだのだが、サウジアラビアなどの産油国が猛反対し中国・インドなども反対したことのゆえに、それは最終案から削除された。欧州諸国と一部の途上諸国の反対を産油国・産炭国および石炭・石油の大量消費国である中国・インドなどがおしきり、「脱化石燃料」の文言が削除された合意文書が採択された。 このコップの中の嵐≠ニでもいうべき事態は、中国主導の緩やかな新興諸国連合≠ェ、トランプ政権の「パリ協定」からの離脱、一九九〇年代いらい「気候変動対策」を先導してきたEUの凋落に乗じて、COPの主導権を握ったことをしめしている。中国、インド、ブラジル、南アフリカ、サウジアラビア、トルコ、インドネシアといった新興工業国の権力者どもは、それぞれの国家的利害を貫徹するために、また米欧主導の国際関係を変える≠ニいう利害の一致にもとづいて緩やかに結束しているのだ。〔直後に開催されたG20においても新興諸国連合≠ェその主導権を握ったといえる。〕 以下、見出し 世界最大の排出国・中国のわるだくみ 「気候変動は史上最大の詐欺」と喚くトランプ |
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香港人民への習近平政権の過酷な弾圧を弾劾せよ! 習近平政権が「香港国家安全維持法(国安法)」を制定・施行(二〇二〇年)してから五年。いま、北京官僚どもは、「国安法は香港の安定と平和を守る守護神だ」などとほざいて、香港の労働者・人民に悪逆無道な弾圧をふりおろしている。一万人以上のデモ参加者を暴動罪などで逮捕し、国安法違反で三三二人を逮捕した。数多の人民を密告によって事後逮捕≠オ、そして中国本土の出身者を闇から闇へと抹殺しているのが、ネオ・スターリニスト官僚どもだ。 「国家分裂」「政権転覆」「外国勢力との結託」などを処罰対象とし、最高刑を終身刑とするこの国安法こそ「国家安全条例」と併せて、まさにネオ・スターリニスト習近平政権が香港の「中国化」にたいする労働者・人民の反抗を根絶やしにするための強権的な治安弾圧法にほかならない。日本のたたかう労働者・学生は怒りを込めて弾劾しようではないか! 悪らつな政治弾圧の実態 香港人民を欧米資本の餌食に供してきた北京官僚 ネオ・スターリン主義官僚の抑圧に抗する香港・中国人民と連帯して闘おう! いま香港人民は、政府への批判の声をあげるだけで国安法や国家安全条例で逮捕される暗黒支配のもとで、非公然の苦闘を強いられている。その一方でイギリスへ移住した労組員たちが、国安法違反で実刑判決をうけた二名の労組指導者の釈放を国際労働組合連合(ITUC)に働きかけて「即時釈放要求」の声明を出させ、世界の労働者に決起を呼びかけている。 だが、ITUCに加盟している日本の「連合」の幹部たちは何らの支援運動もしていない。日本共産党は、中国共産党指導部と会って「台湾問題の平和的解決」などをお願いしただけで、国安法による香港人民への弾圧を何ひとつ弾劾していない。 この既成指導部の腐敗した対応を許さず、わが日本のたたかう労働者・学生は、習近平政権による香港の労働者・人民への弾圧を満腔の怒りをもって弾劾しよう。 香港の労働者・学生に呼びかける。血の弾圧をふりおろす習近平政権は、たんなる「独裁政権」でも「国家官僚資本主義」でもない。彼らは「マルクス主義」の名を騙りながら「社会主義市場経済」などという反マルクス主義的看板を掲げ、労働者を賃金奴隷におとしこめ、みずからは政府=党官僚として、また国有企業の経営官僚層として巨万の富をむさぼっているのだ。その本質は労働者階級の自己解放をめざすマルクス思想を根底から破壊したニセ「マルクス主義」であるネオ・スターリン主義にほかならない。香港で、そして中国本土で困難な闘いをおしすすめている労働者・学生は、苛烈な人民弾圧をうち砕き、ネオ・スターリニスト習近平政権打倒の組織的力を創造するためにたたかおう。 日本において、自民党政権による貧困の強制と大軍拡を阻止するためにたたかう私は、日本反スターリニズム運動の矜持にかけて習近平政権による中国人民への弾圧を弾劾してたたかう決意である。ともにがんばろう! |
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| 民族排外主義を煽動――外国人締め付けに狂奔 十一月四日に首相・高市は、「外国人政策に関する関係閣僚会議」の初会合を開催した。その冒頭に高市は、一部の外国人による違法行為が国民の不安や不公平感を招いている≠ニほざき、「排外主義とは一線を画しつつも、政府として毅然と対応する」などと呼号した。 具体的には、「外国人による国民健康保険の未納の防止策」とか、「外国人による医療費の不払い対策」とか、土地取得をめぐる「不動産の移転登記時などの国籍把握の仕組み」とかを検討せよ、と指示した。 これにもとづいて策定された政府の外国人「制度見直し」の概略によるならば、「在留審査を厳格にする」ために税や社会保険料の未納情報をマイナンバーを活用して政府と自治体間で共有する、「医療費の不払い防止」のために入国前に民間医療保険への加入を求める、出入国残留管理庁がデジタル庁のシステムで国や地方自治体が管理する外国人の税・社会保険料の関連情報を直接参照できるようにする、という施策がうちだされている。とくに政府・支配階級が喧伝している自衛隊基地や原発の周辺の土地が中国人(資本)によって買い取られていることへの対策が、税制度や土地登記制度の見直しとして盛りこまれているのだ。 以下、見出し 札付きの排外主義者を登用 |
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